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静謐なる柩。
捏造満載コードギアスの自己満足二次創作サイト。現在休止中。復活は未定。
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「ゼロ!お前は、お前のやり方は間違ってる!そんな卑怯な方法で手に入れた結果に意味があると思うのか!?」
「予定通り零番隊はルート2を確保、その間に他の団員達は撤退。ああ、藤堂と四聖剣は白兜の足止めを。仕留めることよりも動きを封じることを優先してくれ。余計な被害は避けたい」
『承知!!』

激しく戦いが繰り広げられている戦場。ランスロットから繋がれたオープンチャンネル。
そこから聞こえてくるのは聞こえてくるのは枢木スザクの批判の声で、“黒の騎士団”というよりも主に“ゼロ”に向けられる言葉の刃だ。
しかしそんなものはものともせず、仮面のリーダーは冷静に次の行動を指示する。

不本意ながら、慣れていたのだ。学園でも、戦場でも、スザクによって声高に叫ばれる存在否定。
最初のころは悲しいとか、辛いとかと感じなくもなかったが、もはや麻痺してしまったのか、淡々とした声を出すことができる。

「ああ、それと紅蓮弐式は殿を。団員達の戦闘離脱が確認出来次第、我々も撤退――――」
「大体お前はこんなことをして、両親に申し訳ないと思わないのか!?少なくともテロリストなんかにするために育ててくれたわけじゃないだろう!お前の行為は明らかに両親へ恩を仇で返す、親不孝者のやることだ!そう、お前さえいなければ、世界はもっと…!」
「―――」

ゼロの言葉が、止まった。
それに気付いたカレンは不安そうに呼びかける。

『ゼロ?どうかし…』
「……いや、何でもない。我々も撤退する。カレン、」
『はい!任せてください!』

そして、無事に黒の騎士団は撤退した。
ブリタニア軍の攻撃を受けていたいくつかのレジスタンスの小組織を救出後、吸収。

そう、例え敵将を仕留めたわけではなくとも、紛れもなくこれは騎士団の勝利だった。

 

彼に目覚めたセレナーデ

 

ゼロの無頼のコックピットが開く音が聞こえ、カレンは真っ先に駆け寄っていった。

「ゼロ、お疲れ様です!今日の指揮も、流石でした!被害も殆どありませんでしたし…」
「相変わらずすごいな、ゼロは。今日救出した人たちも騎士団に入ってくれたし、この調子なら、いつかは…」

惜しみなく向けられる賞賛の声。その場にいた団員達の殆どが尊敬と、いくらか縋るような崇拝が混じった目でゼロを見ている。

ゼロについていけば。
ゼロがいるならば。
それなら、いつかは―――

当然だ、そうなるようにしたのはルルーシュ本人。だからこそ、『ゼロ』は結果を出さなければいけない。
結果がなければ、こんな素性の不明な仮面の男についてくるような者はいないのだから。

…そう、だからこそ。卑怯だといくらスザクに言われようとも、この道を違えるわけには、やり方を変えるわけにはいかない。
それに既に自分の手は汚れている。契約を交わした己に、今更引き返す道など。

声をかけてきた者達に適当に返事を返し、ゼロはすぐにトレーラーの自分の部屋へと向かおうとした。
少し、1人になりたかったのだ。
スザクのゼロ批判には慣れたつもりでいたが、流石に『今日』、あんな事を言われるとは。

そして格納庫に背を向けようとしたゼロに、待ったをかけたのは朝比奈だった。

「そういえばゼロ、今日なんか途中で一回止まったよね?どうしたの?」
「あ、そういえば……」
「…大した時間でもなかっただろう。気にするな、特に問題は無い」

そう言われてしまえば、深く問うことはできない。
ゼロのプライベートに関してはどんなに知りたくともそれは許されない。
――それも、騎士団の在り方の一つであるから。

戸惑いつつも大人しく引き下がろうとするカレンの背後から、ふん、と鼻で笑う声が聞こえた。

「枢木スザクの言葉に、何か思うところでもあったのか?」
「……C.C.」

疲れたように、ゼロはその少女の名を呼ぶ。

「何を今更思ったかは知らんがな。アイツがいろいろ言い始めたのは今に始まったことじゃないだろう」
「…お前は、知ってるんじゃないのか。今日が、何の日か」
「今日は別に何の日でも―――ああ、そういうことか」

思い当たるところでもあったのか、あっさりと納得するC.C.の様子に、逆に納得がいかなかったのは団員たちだ。

「どういうことか、聞いていい?ゼロ、君は枢木の言葉の何処に反応したわけ?」
「まさかゼロもやっぱり騎士団は間違ってるとか思って……いえ、すいません。失言でした」
「いい、気にするなカレン。誤解されるような言動をとった私が悪い。もちろん、私は騎士団は間違っていないと思っている。枢木スザクの言う『正しい手段』とやらをとれる者なんて限られているし、そもそもそんなやり方でブリタニアが変わるとも思っていない」
「…騎士団、『は』?」

朝比奈が聞き返さなければ、おそらくそのまま流してしまっていただろう。
その言葉を聞いて、その場にいた団員達は思わずゼロを見る。それは、どういう意味だろうか。

「……『思うところ』、か。そうだな、あえて言うならば」

ゼロらしくない、どこか諦めたようにも感じられる声。

「―――もしかしたら、私が生まれてさえ来なければ、母はしあわせだったかもしれない、と」

予想もしなかった言葉。
思わず顔を見合わせる者、眉を顰める者、そしてゼロのことが何か分かるのかもしれないと少しばかりの期待をする者などと、団員達の反応は様々に別れた。

「母は、美しく、誇り高い人だった。だからこそあの男に目を付けられ、無理矢理孕まされた。その行為は母にとって酷い屈辱だっただろう。でもそれだけなら。もし『私』が生まれなければ、母はあんな所に留まらされることなどなかったかもしれない。…優しい人だったから、それでも私のことを愛してくれたが。きっと、私なんて生まれてこない方が―――」

ゼロが続く言葉を言わなかったのはおそらく意図的だろう。自嘲するかのように紡がれた言葉に、誰も何も言えなかった。
重い沈黙に気付いたのか、ゼロはいつも通りの声で「すまない、お前達には関係無い話だったな」と告げ、踵を返す。

「あの、ゼロ!その…」
「…カレン、私は平気だ。どうやら少し、感傷的になっていたようだ」

心配してくれているのだろう。慌てて何か言おうとするカレンに、気にするなと告げる。

そう、気にする必要なんてない。ただ『今日』だったから、動揺を露にしてしまっただけのこと。
明日になればまたいつも通りのゼロになれる。だって、今日は―――

「―――今日は、“殺された”母の命日だったから、な」

やはり、誰も何も言えなかった。


* * * * * * * * * * * * * * *

「……るーくん」

ゼロの部屋。入室にパスワードが必要なこの場所に勝手に入ってくることができるのは、自分と共犯者の少女、そしてもう1人。
そのもう1人の声が聞こえてくると同時に、ルルーシュの背には慣れたぬくもりがあった。

「…省吾さん、重いから急に抱きつかないで下さいと何度言ったら……」
「るーくんが生まれてきてくれて、俺は嬉しいよ。るーくんと会えて、嬉しい。今、こうして生きていてくれて、すごく嬉しい」

朝比奈はゼロを…否、ルルーシュをぎゅうっと抱きしめたまま、言葉を続けた。

「あんなクソガキが何言おうと、それは事実だよ。変わりない、事実だ。るーくんは、此処にいていいんだよ。生きてていいんだ。ううん、俺が生きてて欲しいんだ。だから、るーくん…」

ああ、なんでこうも上手く言えないんだろう。
朝比奈は自分に苛立ちを感じながらも腕に力を籠める。
もどかしいまでにカタチになってくれない言葉の代わりに、少しでもこの気持ちが伝わればいい。

大切なのだと。大好きなのだと。そう、朝比奈が想っていることを、感じてくれれば。

ルルーシュは暫く沈黙していたが、今まで仕事をしていた机の方から立ち上がり、朝比奈をくっつけたままベッドに移動した。
戸惑いながらも離れるつもりはなかった朝比奈。ずるずる大人しく引き摺られていき、ベッドに背を向けた状態になると、急にルルーシュは腕の中で方向転換して、朝比奈に抱きついた。
まさかルルーシュが抱きついてくると思わなかった朝比奈は、そのまま衝撃でぼすんとベッドに腰を下ろす羽目になった。
流石にルルーシュに押し倒されるほどひ弱ではないので。いや、多分ルルーシュも押し倒そうと思ってやってるわけじゃないと思うが。

ぽかんとした表情を浮かべる朝比奈に、ルルーシュは抱きついたまま拗ねたように顔を背けた。

「……どうせ、あのままの体勢でも疲れますし、省吾さんは離れる気、なかったでしょう」
「…いや、俺が驚いてるのはそこじゃないよるーくん」
「うるさいです。たまには俺だって人肌が恋しくなる時期があったりしてもいいじゃないですか」

そう言ってぴったりくっついてくるルルーシュだが、態度とは裏腹にその手にはあまり力が籠められてはいない。多分、振り払おうと思えば振り払える。よく見れば、手が微かに震えていた。

おそらくこれは“拒絶されること”を前提とした、その上での甘えだ。
そんなに怯えなくても、朝比奈はルルーシュのことを拒んだりしないのに。

それでも、おそるおそるでもルルーシュから伸ばされた手に、少し頬が緩む。多分朝比奈は結構締まりがない表情をしているだろう。
でもそれくらい嬉しいのだ。
『ゼロ』として、『兄』として、精一杯虚勢を張って、『強いフリ』をして生きてきたこの子供にとって、『弱さ』を見せることができる相手なんていない。
妹のナナリーは不安がるかもしれない。
アッシュフォードはいつ裏切るかわからない。
騎士団の者にはそもそも弱いところを見せるわけにはいかない。

枢木スザクは――唯一その可能性はあったが、今は敵。

つまり、ルルーシュがこうして『弱さ』を見せたのは、朝比奈が初めてだ。…あのC.C.とかいう少女はどうだか知らないが。明らかに甘えることに慣れていない様子からもそれが伺える。

つまり、それって、やっぱり。

「~~~~~~~るーくん大好きっ!」
「ふぇっ!?わ、ちょ、省吾さんっ!?」

朝比奈は思いっきりルルーシュを抱きしめ返した。驚いた声が聞こえるけど気にしない。

だって、それはつまり、ルルーシュの中で朝比奈が紛れも無く『特別』だということだ!

基本的に朝比奈が何をしても苦笑して許容してくれるルルーシュだが、もともとルルーシュの性格からして寛容だったので、あまり自分とルルーシュが仲のいい証明にはならなかった。
どちらかといえば、朝比奈の一方通行な好意のような気もしていたのだ。

でも今の状況はどうだ。ルルーシュは、朝比奈に甘えて、頼っている。―――朝比奈、だけに。
なんだか朝比奈はとても優越感を感じた。誰に対してだろう――でも、おそらく、とりわけスザクに対して。

「……省吾さんは、あったかいですよね。なんか、落ち着く…」

こわごわとしていたルルーシュも、手を振り払われなかったことでだんだん安心したのか、気持ちよさそうに猫のように目を細めて朝比奈に擦り寄ってくる。
完全に気を許して甘えてくるルルーシュに、朝比奈は喜びを隠せなかった。だって可愛い!なにこれ欲しい!

(……俺だけのモノにならないかなあ)

密かに朝比奈は思ったが、表には出さなかった。人間の欲は無限なのだから、満たされればまた次が欲しくなるのは当然だ。
このとき感じたのが独占欲だと朝比奈が認識するのはそう遠いことではないだろう。

「ねえ、るーくん。俺思うんだけどさ。多分、間違わない人間なんていないんだよ」

ルルーシュの体がぴくりと反応した。朝比奈は続ける。

「俺だって、今は藤堂さんのこと尊敬してるし、大好きだけどさ。でも最初は目の敵にしてなにかとつっかかってたんだよ?」
「…ホントですか?なんか、考えられません」
「ホントだよ。いろいろやったんだけど、『敵わない』って思い知らされちゃって。多分あのクソガキからすれば『間違った過程』とやらかもしれないけどさ、でも今俺はこうやって、藤堂さんと一緒にいること、後悔したことないよ。
それに、そもそも―――」

ルルーシュの傍にいると言いながら第3皇女の騎士となり、ルルーシュを護ると言いながら傷つけ続ける矛盾したスザク。
その矛盾は、『間違っていない』のか?

それを朝比奈は口にしようと思ったが、やめた。ぶっちゃけ朝比奈にとってスザクはどうでもいいのだ。
ただ、七年前からルルーシュを取り合っていたから、少し意識していただけで。

―――そして今。朝比奈がルルーシュにとって『特別』だと分かった今。
同時に枢木スザクは朝比奈の中で無価値になった。だってもう朝比奈はスザクに『勝った』のだ。ならもうあんな奴どうでもいい。

藤堂鏡志朗は全てにおいて朝比奈に『勝った』。故に朝比奈は藤堂を慕う。
ルルーシュはまた別だ。初めは力を振りかざすのではなく、己にできる最良の手段を見極め、実行してきたところが興味を引いた。

だが、枢木スザクは朝比奈が興味を持つにふさわしいものを何一つ持たず、示していない。
あえて朝比奈の中での立場を言うなら『ルルーシュを奪おうとする者』だったが、その点で既に朝比奈が『勝った』。

「……そもそも?」
「んーん、なんでもない。えへへ、やっぱいいなー、るーくんは」
「?」

やっぱり俺のモノにしたいなあ、とそんな言葉は伏せておいて。
お互いのぬくもりで癒し癒され、しばらく2人はそのまま和んでいたのだった。

離れるころには、ルルーシュも『いつも通り』に戻れていたのは言うまでも無い。

 

 

 


( 一応おにーちゃん的ポジションは確保できたんだけどなあ。
 でも満足できないのはなんでかなー?うーん、なんでだろう。
 ずっと『特別』なのは俺だけだったらいいのに。

 …あれ?いやでも、るーくんの為にも理解者はいた方がいいのに。

 ――――あ、もしかして、俺)

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無題
えー、なんかお久しぶりです?
うん、枢木むかつきますね!!
ほんとなんてことを言ってくれたのでしょう!
朝比奈さん独占欲はやく好きだと気づけー。
そして、ルルを幸せにしてやれー
だって「特別」だし。
やっぱいいですね。るー君シリーズ。
頑張ってください、応援してます。
2008/06/08(Sun)18:33:58 編集
ありがとうございます
こんばんは、天海です。
素敵な小説をありがとうございます。
これからも朝比奈とルルーシュはお互いに癒しの存在であってほしいなと思いました。
というか、朝比奈は自覚してなかったんですね。
無意識での独占欲って可愛くて好きです。
枢木は別ですけど。
これからも、その癒しと独占欲を持ってルルーシュを枢木という名の外敵から護ってあげてください。
次のお話も楽しみにしています。
それでは。
天海 2008/06/08(Sun)22:31:12 編集
無題
今晩は。
枢木は言って良い事と悪い事の区別がつかないんでしょうかね?あなたがやっている事の方がよっぽど親不孝だと思うのに・・・
でも、るーくんの傍に居てくれる人が居てよかったです。朝比奈さんにくっついて安心する、るーくんいいですね!
目指せ!兄から恋人?頑張れ朝比奈さん!
るー君シリーズとっても好きです。これからも影ながら応援しています。
臣近 2008/06/08(Sun)23:00:07 編集
甘えて?
るーくんになんて事をいうのさ!!って感じです。
親不孝って、自分のことを棚上げして…。

るーくんが甘えるなんて…。
朝比奈がいるからなのか、其処まで追い詰められていたのか…。
それとも両方?

『拒絶されることが前程』なんて哀しいですね。
朝比奈さん!!るーくんにもっと甘えることを教えてあげてくださいね。時間を掛けてでも!!
瑠衣 2008/06/09(Mon)00:14:28 編集
にゃはー(´∀`)
後半、人肌恋しいるーくんが可愛いよ。
るーくんへの本当の気持ちに気付き始めた朝比奈さんがいいねぇ(ニヤリ(←キモい)


ス ザ ク の 馬 鹿 野 郎 ! !

……………ハイ。
というわけで、スザクの説教は駄目駄目っすね。
あやつは矛盾ボーイなんで救いようがないです。


私はスザク嫌いじゃないですけど、なんかもう哀れだ。



Lily 2008/06/09(Mon)00:55:42 編集
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