ささやかなインテルメッツォ（１）

時間稼ぎに小ネタ投下。
返信とリクはもう少し…し、しばらく？待ってください。

「るーくん」シリーズ番外です。
別名スザクいじめと言えなくもない。

いやだって、コンビニでたまたま見かけたもので。
ブルーベリーとどっちが怖いですかねー（にやにや）

※修正しました。夜行性人さん、感謝です。

ある日のお昼時のことである。
アッシュフォード学園の中庭で、生徒会メンバーは揃って昼食を取っていた。

そんな中で、ルルーシュはふと思い出したように言った。

「そうだ、スザク。差し入れがあるんだ」
「差し入れ？ホント？うれしいな、ルルーシュって料理上手いから！」
「人並みだと思うけどな。ほら、これ」

お前はいつも軍で頑張ってるからな、と笑って差し出されたのは、なんだかルルーシュに似つかわしくない、黒い大きな塊。
ルルーシュのことだから、見た目にもこだわった美味しそうなものが出てくると思っていたスザクは少し戸惑った。
だいたい拳一つ分、もしくはそれより若干大きいくらいのそれ。
よく見れば、それは上司の人からよく差し入れられている…

「……おにぎり？」
「そうだ、おにぎりだ。懐かしいんじゃないかと思って。嫌だったか？」
「う、ううん。なんでもない。もらうね」

少しトラウマが蘇りかけたが、心配をかけるわけにはいかないと思い、なんでもないフリをする。
そう、ルルーシュは当時の日本にだっていたのだ。セシルと同じように、ジャムを入れたりするような暴挙に出るはずが無い。

スザクは自分に言い聞かせて、笑顔で「いただきます」とおにぎりに齧り付く。
そして、その味は―――

「……うっ！？」
「どうだ？美味いか？」

心なしか目を輝かせて聞いてくるルルーシュ。
スザクは顔を引き攣らせて、おずおずと質問した。

「………えーと、ルルーシュ。これ、一体何入れて…」
「梅干と鰻と黄粉だ。ご飯とよく合うんだろ？」

自信満々に言い切られ、スザクは思わず絶句した。
いや、確かに合うけど！合うけどそれは混ぜるモノじゃない……っ！！！
ていうか、梅干と鰻って普通に食べあわせが悪くないか！？
黄粉だって、小さいころはかけて食べたこともあったが、今はあんまり…

「お前が昔教えてくれたんじゃないか。好きだっていってただろ？『ばくだんおにぎり』。適当にいろんな具を入れるって言ってたから。結構手に入れるの苦労したんだぞ？梅干なんか俺が自分で漬けたんだ」

ああそうだとも。遠き夏の日、スザクは言った。
「『ばくだんおにぎり』って言ってさ、いろんな具が入ってて、おっきくて丸いんだ！すっごい美味いんだぜ！」と言った。
言ったけど、言ったけど！！ああ、なんでそんな事言ったんだ僕っ！？

しかもそんなに頑張って具の調達をしてくれたというなら、いっそ単体で入れてほしかった…っ

ルルーシュは、スザクの反応に不安になったのか、さっきの表情とは打って変わって、へにゃりと眉を曇らせた。

「…不味い、のか？」
「え、いや…ううん！すっごく美味しいよ！」
「そうか、よかった。頑張って作ったから、たくさん食べてくれ！」

やっちゃった――――！？

思わず後悔しなくもなかったが、しかし折角ルルーシュが気を使ってくれたのに、その心遣いを無駄にするわけにはいかない。

そして他の生徒会メンバーに哀れみの目で見られる中、スザクはまたおにぎりへのトラウマを一つ増やしたのだった。

＋　＋　＋　＋　＋　＋　＋　＋　＋　＋　＋　＋　＋

一方、黒の騎士団サイド。

「……と、いうことで、たくさんおにぎりを作ったので差し入れに来ました」
「いらないわよそんなゲテモノ！あんた日本人嘗めてるの！？
梅干も鰻も単体でご飯と食べるから美味しいのであって、一緒に食べたりしないわよ！
ついでに言うと黄粉かけて食べるのはごく珍しいパターンなんだからねっ！」

にっこり笑っておにぎりを差し出したルルーシュに、朝比奈や藤堂以外で唯一ルルーシュと個人的に面識のあるカレンは思いっきりツッコんだ。
思わず周囲の人間は心の中で拍手喝采。
実をいうと、どうオブラートに包もうか迷っていたのである。カレンと違いストレートに言うほどまだ親しくないし。

でもルルーシュは特にリアクションもなく、普通に返す。

「知ってるが？」

あっさり返されて、思わず誰もが沈黙する。

………それって…えっと、つまり―――

ルルーシュはふっと嘲笑を浮かべる。

「わざとに決まってるだろう？」

うわあ。
黒の騎士団の心はこの時一つだった。
いつも邪魔する枢木スザクにいい気味だと思わなくもないが、でもなんていうか。

でもそんなことは気にすることなくルルーシュは続けた。

「安心しろ。こっちに持ってきたのは『から揚げ＋ツナマヨ』とか、『鮭＋ツナ＋エビ＋マヨ』とか、そういうまともなやつだ。ちゃんと味見したから味も保証する。あとは『昆布＋おかか』とかもある」
「え、もしかしてそれ味付け醤油？俺それがいいなあ、るーくん」
「相変わらず度を過ぎた醤油好きなんですね省吾さん…どうぞ」
「ありがとー♪」

にこにこした朝比奈がおにぎりを受け取って「うん、美味しいよｖ」と返し、それで安心した他の人たちもどんどんおにぎりに手を伸ばす。
もちろん味は上々で、おにぎりはキレイに完食され、ルルーシュも満足げに笑う。

…スザクの悪夢のランチタイムとは対称的に和やかな時間だったそうだ。