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静謐なる柩。
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「行政特区日本の設立を、宣言します!」

湧き上がる歓声。『イレヴン』となっていた者達を中心に、爆発的にざわめきは音量を増した。
興奮に包まれる周囲とは対称的に、今こうして傍の屋台の影に息を潜めているしかない自分達。
今までゼロとして活動してきた全てを無駄にされたと、ユーフェミアに対する怒りもある。でも、それ以上にルルーシュは惨めだった。

立場の違いを、見せ付けられるようで。お前など所詮ただの生きた屍でしかないのだと。所詮ゼロなど光にはなりえないのだと!

頬を軽く紅潮させて、ユーフェミアは歓声に応え、行政特区について説明していく。
目を輝かせ、未来には必ず幸せがあるのだと、こうすれば絶対上手くいくと、そう信じているのだろう。

しかし、彼女は気付いているのだろうか。
この宣言に対する批判が起きないのはユーフェミアが皇女だからであり、同時に好意的な反応が多数を占めているのはアッシュフォードが作った学園の元々の校風が開放的で、なおかつ『枢木スザク』のいう『イレヴン』を内包する学園だからこそだということに。

そして、この学園でさえも『イレブン』の存在を認めようとはせず、今も冷めた目でユーフェミア達を見てる者がいることに!

(……いつまでも、この場にいるのは得策じゃない)
そしてナナリーをつれて静かに、気付かれないようにその場を離れていく。
ナナリーは触れたとき、手が震えていたのに気付いてしまっただろうか。
もはやその時自分が感じていたのが怒りだったのか憎悪だったのか、それとも恐怖だったのか、それすら分からない。
ただ、集まった人々から一歩でも離れることしか、それしか考えられなかった。


帰ってきたクラブハウスに、咲世子さんはいなかった。
ナナリーを任せようと思っていたのに何処へ、とルルーシュが探しに行こうとすると、震える声でナナリーはルルーシュを呼ぶ。

「……おにい、さま」
「ナナリー…」
「ねえ、なんでですか?なんで、ユフィ姉様はさっき何を言ったんですか。だって、私言いました。お兄様さえいればいいって。言ったのに。なのに!どうして!?なんで、なんでよりにもよって『此処』で!!」

最初はまだ落ち着いていたが、感情が高ぶったのか、ナナリーの声はだんだんとヒステリックになっていく。
なんで。どうして。そう泣きそうに続けるナナリーにルルーシュは慌てて駆け寄り、抱きしめた。

「ナナリー。大丈夫。大丈夫だから、俺が、ちゃんと護るから、だから」
「逃げましょう?ねえ、はやく逃げましょうお兄様!きっとユフィ姉様はナナリーからお兄様のこと、取り上げるつもりなんです。だってユフィ姉様はスザクさんのことだって、連れて行ってしまった!」
「ナナリー!」
「私、私は、ただ優しい世界が、この優しい『箱庭』が続いてくれれば、それでよかったんです!お兄様と一緒にいられて、笑ってられれば、それで…それだけでいいんです。それが、私の望んだ『やさしいせかい』なのに!」

ルルーシュは一瞬表情を凍らせた。盲目であるナナリーは気付かない。

「ごめんなさいお兄様、ナナリーは悪い子です。ホントは、他の人なんてどうでもいいんです。お兄様さえいるなら、それでよかったんです。もう、我が儘言いません。『やさしいせかい』が欲しいなんて言いません。だからお願いですお兄様、ずっと、ずっと一緒にいてください!」
「ナナ、………っ」

もちろんだよ、と声をかけてやりたかった。かけようとした、その時。

契約。
その二文字が頭を過ぎる。

拘束された少女。交わした契約。殺した義兄。黒の騎士団。ユフィの騎士になったスザク。

ぐるぐるといろんな光景が頭を駆け巡って、声が喉に張り付いて、カタチにならない。

「おにい、さま?」
「……ああ、そうだね。そうだ…俺は、ずっと傍にいるよ」
「…うそ、ですね」
「ぇ」

なんとか搾り出し、いつも通りにかけた言葉は、あっけなく見破られた。

「お兄様、ダメですよ。嘘ついたら。私、分かってます。分かってるんです、お兄様が、私を置いていこうとしてること」
「な、俺はそんな…っ」
「お兄様は、私に『やさしいせかい』を与えて、そのままいなくなるつもりだったでしょう?ダメですよ。ダメです。絶対に、許しません」

―――気付いて。
動揺が隠し切れずに、声にすら現れてしまった。ダメだ、これではナナリーが心配してしまう。

できることならナナリーの願いは叶えてやりたい。もちろんルルーシュだってナナリーの傍にいたい。
しかし、しかしそれでも、犀は既に振られ、全ては始まってしまっている。もう、止まることなど許されはしない。
それにルルーシュは既に人では―――

「『契約』してしまったから。そう思っているんでしょう?」
「!?」

ひぅ、と息を呑んだ音がやけに大きく聞こえた。
信じられない、と。今の己の表情にはありありと書いてあるだろうと予想できる。

「ナナリー、どうして知って…」
「C.C.さんから聞きました。人とは異なる摂理。異なる時間。異なる命。その覚悟があるのなら―――」
「まさか、お前…っ」
「私も、契約したんです。私の願いは『お兄様と一緒にいられること』。大丈夫です。目も、見えます。足だって動くんです。ナイトメアだって、スザクさんにも負けません.
そう、マークネモという私の「騎士の雌馬(Kightmere)」――いいえ、「悪夢(Nightmere)」があれば。私のギアスがあれば。ですからお兄様、連れて行ってください。お願いです、ねえ…っ」

ナナリーの両目からぽろぽろと涙が流れる。何時の間にか、その瞼は開かれ、薄い菫色の瞳が露になっていた。

「……俺は、ゼロだよ」
「知ってます。ですから、私も行きたいんです。黒の、騎士団に」
「ユフィの宣言のせいで、騎士団はボロボロになってしまうだろう。殆ど、いや…誰も残らないだろうな。きっと残るのはC.C.くらいだ」
「でも、私は一緒にいます。一緒に、いたいんです」
「…クロヴィスを、義兄さんを、殺した」
「クロヴィスお義兄様の親衛隊もお兄様のこと殺そうとしたんだって、C.C.さんが言ってました。気づいてなくても、クロヴィスお義兄様はお兄様のこと、殺しかけました。正当防衛です」
「ナナリー、俺は……」
「ダメです。絶対に、絶対に一緒に行くんです」

いやいやと子供が駄々をこねるように、頭を振ってナナリーはルルーシュにしがみつく。
こんなナナリーの態度は何時振りだろう。そう、きっと母さんが生きていたころくらいだ。

懐かしさと同時に、これは何を言っても聞かないだろうという諦観の念が湧き上がる。
それに、ナナリーも既に理を外れてしまったというのなら、ゼロでも構わないと言うのなら、ルルーシュにはナナリーを拒む術なんてないのだ。

「…わかった。ナナリーがそう望むのなら、俺はそれを叶えるよ。―――ずっと、一緒にいるよ。俺の大事な、たったひとりのお姫様」

優しく、籠められるだけの愛情を籠めて。囁けばナナリーは泣くのをやめて、ほっとした顔つきでルルーシュを見上げた。それでも、決して離れまいと言わんばかりに、しっかりとルルーシュにしがみついたままだ。

ナナリーの頭を撫でて、ある程度これからの展望を考えていたルルーシュはぽつりと呟きを落とした。

「アッシュフォードには、悪いことをするな…ここまで、力を尽くしてくれたのに」
「でも、もう『箱庭』は壊れてしまいました。仕方ないです、だって、ここにいたら見つかってしまいます。行政特区日本にだって、参加するブリタニア人なんて珍しいから、メディアの注目の的になるのが分かりきっていますもの」

だからこそ、自分達は参加できないというのに、あの真っ白な義妹は理解してくれないだろう。
その純粋さは時にとても痛いのだと、彼女は知っているだろうか。

―――どちらにしても、もう『ルルーシュ』と『ナナリー』がこれから関わることなんて無いけれど。

「…なにか、持って行きたいものはあるかい?」
「いいえ、お兄様がいてくださりますから」

未だに喧騒が収まらない学園。太陽の光に眩しく照らされて、誰もが楽しそうな表情で。
初めは自分達だけのために作られた箱庭だった。けれど、ほら、こんなにもあの場所は輝いてる。

そう、アッシュフォードもいつまでも自分達のような、落ちぶれた皇族なんかを気にかける必要なんてない。
あそこには、もう自分達なんかよりも価値のある、きらきら光る、綺麗なモノで満ち溢れてるのだから。

裏なんてない笑顔。
惜しみなく注がれる好意。

友達ができた。先生に怒られた。授業をさぼった。お菓子をもらった。お茶会をした。イベントを楽しんだ。

何の策謀も絡まない、ルルーシュとナナリーが密かに続けばいいと願っていた『平和な日常』。
―――あまりに身近にひかりがあったから、思わず手に入るのだと錯覚してしまった。

「さようなら、大好きでした。幸せでした。今まで、ありがとうございました」
「そうだな…きっと、それなりに満たされた日々だった。…もっといられたら、よかった」

「さようなら、私達の『箱庭』」「さようなら、俺達の『箱庭』」


そしてひかりに背を向けて、二人は歩き出した。
だってそれは綺麗かもしれないけれど、隠れて暮らすしかない自分達には強すぎるひかりだ。だから。

 

波乱の学園祭宣言。
その日から、学園のクラブハウスに住んでいた二人の生徒が姿を消した。
荷物や家具などはそのまま残っていたため、初めは兄のいつもの賭け事かなにかだと思われていたが、結局いくら手を尽くしても2人の姿が見つかることはなく、しかし何故かブリタニア軍に捜索届が出されることもない。

―――また、今日も。学園の副会長とその妹の姿を見た者は、いなかった。



(
                                                                                                                                          
(ねえお様、その“行政特区日本(らくえん)”では、心はもう痛くないの?            
 ねえお様、その“ 行政特区日本(らくえん)”では、本当にお兄様と、ずっと一緒にいられるの?)




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政治って・・・
行政特区日本は政策としては不出来。と言うか完璧な失敗作ですよね。
明らかに失敗する事が解っていた政策。(一部それを理解していない人もいましたが)
失敗するにしても過程が正しければいいのか?
特区宣言は正しい手順なんかは全くありませんでしたけど。ルールとか手順とか一切合財無視した宣言だったのに。
その事に関してスザクは何も思わなかったのだろうか?
…思わなかったんだろうな。普段「間違った過程で手に入れた結果に意味なんて無い!!」とか言っているのに。

政治は遊びでは無いんです。
その国には沢山の人達が生活していて、政治はその人達の為になせれていかないといけないんです。
ユフィのアレはダメです。
イレブン(日本人)の事を考えての政策だと言っていますが、本質で言えばユフィがルルーシュ達と一緒にいたいからと、そんな身勝手極まりない理由と皇族だという事だけで、ゴリ押しした政策なんですよね。
参加を促している騎士団に事前に交渉があった訳でもなく、それどころか総督であるコーネリアにすら全くの相談もなく、政治をしていく上で必要な議会にすら提出されていない案件です。

シュナイゼルにしか見せていない。
彼は「素晴らしいね、ユフィ」と言った。
おそらく、シュナイゼルは妹のユフィに言ったのだと。何が素晴らしいのかは解らないけれど。
政策なのか、理想なのか、それとも別の何かなのかは解らないけど。

ナナリーの為と言っていた。
ナナリーは「お兄様と一緒に居られれば」と。
それで何故【特区宣言】が出てくるのかは全く持って理解不能だが。
ユフィの中では確かにナナリーの為といえば、そうなのかもしれない。
ユフィには皇族としての権限がありますから。それを行使したに過ぎない。
でも、それがナナリーの意思の無い所の、ナナリーの気持ちを理解していないのだから、ユフィの独善である事には変わりは無い。
だから、「~の為」って言葉が簡単に言えるのだと思うのです。
人間はそんなに多くのものは持てません。
求める事は出来ても、求めたものを自分の腕の中に留めておけるかは全くの別問題だから。
これはルルーシュにも言える事だとは思いますが。

まぁ、長々と色々と書き綴ってみましたが、私は今も【行政特区日本】に関しては納得は出来ないという事を言いたかったのです。
前振りが長くて申し訳ないです。

ルルーシュの中ではランスロットのデヴァイサーを知った時と同じくらいの衝撃があったのではないだろうかと…。
瑠衣 2008/06/15(Sun)19:06:03 編集
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