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静謐なる柩。
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アッシュフォード学園でユーフェミア殿下によって為された『学園祭宣言』。
メディアに取り上げられない日はなく、また生徒達も注目されて嫌な気はしないのか、どこか浮ついた様子が隠せない。
ほとんどの生徒はその宣言を好意的に捉え、そのことをスザクは喜んでいた。

しかし、当たり前だ。皇族の行動をどうして責めることができようか。それは立派な皇族批判という罪だ。
それに『行政特区日本』がなんなのか、「『イレブン』が『日本人』と名乗れる」以外のことを、誰も知らなかった。
誰にも『特区』が明確に何なのかなんて分からないのだ。知らないものを、どうしたら否定することができるというのだろう。

生徒会室でも、それは変わりなかった。いや、むしろ肯定の意が強かった。
ユーフェミアの騎士のスザク、それにユーフェミアに度を過ぎた敬愛を向けるニーナがいるのだ。迂闊に批判なんてできるわけがない。
そしてスザクとニーナがユーフェミアの素晴らしさを語っている中、他の者達は居心地が悪そうに(特にカレンが)ただ黙々と作業をするだけだ。

「……にしても、ルルーシュ達、どーしたんだろうな」

ぽつりとリヴァルが口にした言葉に、誰もが思わず口を噤んだ。
もう、2人がいなくなってから何日も経っているが、何の音沙汰も無い。手紙や電話などの連絡はもっての他、目撃証言さえ無いのだ。
最初は賭け事かなにか、もしかしたら2人で内緒の小旅行でもしてるんじゃないかと軽く考えていたが、ここまでの徹底ぶりは異常だ。

もしかしたら、もう、二度と―――

胸を過ぎった不安を誤魔化すかのように、話題を振ってしまったリヴァルはわざと明るく笑い飛ばしてみせた。

「まあ、ルルーシュのことだし、何か企んでるんだろうな!ナナリーちゃんだって一緒なんだし、そう危ないことなんてしてないだろうし!へーきへーき、だってあのルルーシュだぜえ?もしかしてそこらの貴族やりこめて悪人面で笑ってるんじゃねえの?」
「確かに……」

思わず同意してしまったのはカレンだ。よく人の悪い笑みでからかわれている身としては、その様子がありありと想像できる。
そうね、そうだよねと次々に声が上がって、「ほーらルルちゃんがいない分ちゃっちゃと働くー!」とミレイにせかされ、沈んだ空気は払拭され、いつも通りの風景が出来上がる。

―――ただ、その場に2人がいないだけの、いつも通りの風景が。

スザクも、リヴァルの言に同意して笑ってみせた。

「そうだよ、きっと大丈夫、ルルーシュもナナリーもすぐに帰ってくるよ」

だってユフィがあんなに素晴らしい政策を出してくれたんだもの。きっと2人とも喜んでくれ―――

「―――無責任なこと、言わないで」

続けようとした自らの主への賛辞は、今まで聞いたことない、ミレイの低い声で遮られた。
思わず動きを止めて、ミレイを見る。ミレイは無表情だった。何の感情も浮かべて―――いや、違う。目には隠し切れないなにか暗いモノが宿っている。
そして、それはスザクに向けられている。
そう、それは、あえて名前を付けるとするならば、怒りや憎しみ、嫌悪のような負の。

そこまで考えてスザクは呆然とした。もちろんスザクだって軍人である以上、誰にだって好意的な感情を向けてもらえるとは思っていない。
けれど、何故。何故そんな感情を『ミレイ』が『スザク』に向けるのだ?
それも今まで感じたことがないほど、強く、深い憎しみを―――!

他の生徒会メンバーも呆然としていた。いつも明るくて、元気で、辛いことなんてないような顔で笑ってみせていた会長。さっきまで『いつも通り』に笑っていたのに、今の彼女はまるで別人であるかのようだ。

「それをどうして貴方が口にするの。口にできるの。どうして……だって、全部貴方のせいじゃない!枢木スザク!!」

途中から感情が抑えられなくなったのか、激情のままに叩きつけるようにミレイは叫んだ。

「貴方がいなければ、こうやって学園が注目を浴びることなんてなかった!貴方がいなければ、2人がここから姿を消す必要なんてなかった!なのになんで箱庭を壊した貴方がのうのうと此処に居座っているの!?」

誰もが息を呑んだ。
その言葉は、まるで、いや、まさしく『スザクのせいで2人はいなくなった』のだと、そう語っている。

「か、会長……それって、どういう」

恐る恐る問いかけてきたシャーリーの言葉は無視して、ミレイは続けた。

「知ってたくせに!ルルちゃん達が“誰”で、“何”から“隠れていた”のか、知ってたくせに!
“アッシュフォードがお2人を匿っている”って、知ってたくせに!なんであんなことしたのよ!!?」

『隠れていた』?『アッシュフォードが匿っていた』?
全く知らなかった事実が明らかにされ、知っていたというスザクに視線が集まる。
だが、スザクは意味が分からないという顔をしていた。僕が一体何をしたんだと、そう言いたげな。

ここまで言って自分が何をしたのかさえ理解していないなんて―――こんな、愚か者に奪われたなんて!

ミレイは苛立ちを隠すことなく舌打ちして、思い切りスザクを睨みつけた。

「そうよ、そうだわ…『軍人』なんて、受け入れるんじゃなかった…!
皇族からの命令でさえなければ、ルルちゃんが頼んだりしなければ、貴方なんか入れなかったのに。『日本人』なんか、入れなかったのに!」

その言葉に、スザクだけでなくカレンも肩を震わせた。
2人の目には、若干の失望の色があった。会長が、そんなこと思っていたなんて―――そう物語っていた。

(ああそうか、カレンはハーフだったわね)

頭を掠めた事実は、しかし今のミレイへの抑止力とはならない。
そうだ、だからなんだというのか。かつての『日本』で、主がされたことに比べれば、この程度。

目に暗いモノを宿したまま、ミレイは婉然と微笑んでみせた。あらん限りの侮蔑と嘲りを籠めて。

「もしかして、『日本人』がルルちゃん達に何をしたのか、アッシュフォードが知らないとでも思ってるの?」

スザクの喉から、引き攣ったような音が漏れた。
明らかに肯定を示すスザクの反応に、驚愕の声が上がる。

「ちょ、ちょっと待ってください会長!ルルーシュが何かされたって…でも、ルルーシュはイレブンのこと」
「そ、そうですよ!ルルーシュってたまに助けたりとかだってして」

信じられない、とスザク以外のメンバーは言う。特にカレンはその色が顕著だった。

でも、それが事実だもの。だからミレイは笑みをそのままにスザクに事実を突きつけるのだ。

「今の『イレブン』が受けている待遇そっくりそのまま、もしくはそれ以上のこと、したのよね?
住む場所として提供したのは薄汚くてボロボロの土蔵、食事は碌に与えないどころか与えたかと思えば毒入り、外へ出れば無抵抗の子供を寄って集って気が済むまで痛めつける。スザクだって、初対面でいきなり殴りかかったんでしょう?」
「ち、違います!いえ、確かに、そうですけど…でも、今は!」
「それは貴方の嫌いなゼロの“結果論”でしょう!?都合のいい時だけ意見を翻さないで!」

なにそれ、と誰かが呟いた。
何を言うことができただろう、だって、そんな扱い受けていたなんて、まさか、嘘。

与えられた情報に頭が混乱する。スザクは友達だと笑ってみせたルルーシュ。たまにイレブンを助けさえするルルーシュ。
なんで。そんなことされたなら、イレブンのことを憎んでも、嫌ってもおかしくなんてないはずだ。そんなのって―――

信じられないと物語るその表情を見てミレイも思う。
ミレイだって信じられなかった。当時、アッシュフォードが保護した彼らは、『日本』をいい気味だと、自分達にこんなことをした報いだと哂うことなく、死者達を悼んでいた。人質としての役目を果たせなくて申し訳ないとさえ言っていた。

「ルルちゃんは優しいから『当時の情勢を考えれば仕方の無いことだ』って許容したんでしょうけど、私は許すつもりはないわ。
―――まだ、10歳だったのよ?母親が殺されたばかりで、ナナちゃんだって目と足が不自由になったばかりだったのよ!?」

ミレイの激昂に、スザクは一歩身を引いた。彼がぼそぼそと口にしているのは、意味の無い音の羅列だ。そんなものに耳を貸すつもりはない。

「……ころされ、た?」
「ナナリーちゃんって、生まれつきああだったんじゃ、ないんですか…?」

混乱する周囲の反応は気づかないフリをして、裏切りの騎士に、ミレイは刃を向ける。
そうとも、過去のことだけじゃない。今だって、目の前の男はミレイの大切な宝物を傷つけ続けている!

「大体ねえ、『間違った過程で手に入れた結果には価値は無い』?別に貴方の思想にあれこれ口出しするつもりは無いわ、個人の思想はそれぞれだもの。だけどね、どうして此処でそれを言うの!?遠まわしにルルちゃん達は間違ってるって、生きているのに価値は無いって言いたいの!?」
「な、…違います、そんなことは!」
「言ってるじゃない!2人のIDはアッシュフォードが作った偽物だって、知ってるくせに!生きてるって知られないためにも、嘘で塗り固めるしか他にないって、分からないの!?正しい手段なんて、取りたくても取れない人がいるって、なんで分からないのよ……!」

とうとう、涙が零れた。分かってる、本当はここまで口にしていいことじゃなかった。でも我慢なんてできなかった。
目の前で主達はスザクの言葉に傷ついていた。でも、ミレイには何も出来なかった。あの悔しさを、どうして今堪えることなんてできるだろう。
それにミレイは知っている。2人が帰ってくることなんて有り得ないと、此処にいる誰よりも知っている!

ミレイがなりたくてもなれなかった主達の『騎士』にと望まれた男は真っ白なままの『お飾り』に膝をついて。
それだけでなく『箱庭の番人』としての役目さえ奪った。アッシュフォードと主を繋ぐ、最後の砦だったのに!

「なんでよ、なんで此処なの?なんでよりにもよって此処であんな宣言したの?いいえ、どうしてその前に学校辞めてくれなかったのよ!皇族の騎士になったりしたら、周囲の人物だって調べられるのくらい予想できるでしょう!?そのせいで2人が危険になるとは思わなかったの!?」

ようやくそのことに思い当たったのか、スザクの顔色がみるみるうちに悪くなっていく。
だがもう遅い。堅牢なはずの箱庭は、砂上の楼閣へと成り果て、とうとう砂丘に埋もれてしまった。

この、男のせいで―――!

「返して、返してよ!2人を返して、私の宝物を返して…!大切なの、ずっと護ってきたの!あの方たちのためにつくった学園だったの、箱庭だったの!楽しいって言ってくれたのに、信じてくれるって言ってくれたのに、なのに、貴方のせいで!貴方達のせいで!」

スザクへと掴みかかったミレイは、我に返ったカレンとシャーリーに抑えられ、スザクはリヴァルに生徒会室からの退出を促される。
今のミレイが冷静でないのは一目瞭然だ。
躊躇いながらもひとまずドアから出て行こうとしたスザクに届いたのは、今まで生きてきた中で聞いたことが無いほど、暗く、強く、深い怨嗟の声だった。

「ゆるさないから」

ミレイはスザクを明確な殺意を籠めた目で見ていた。視線だけで人が殺せるというならば、確実に殺せるような、そんな目で。
びくりと体を震わせて、スザクはこの場から逃げるように去っていった。なんで。だって、僕は間違ってなんかいないはずなのに。

(ユフィ…ユフィに会いたい、ユフィなら、分かってくれる……僕は、間違ってない!)

鞄も置き去りに、スザクは無我夢中で政庁へと走った。彼の穢れも何も知らない、いつも自らを肯定してくれる主の元へと。
去っていくその背中には、ミレイからの呪いの声がなおも投げつけられる。

「絶対に、赦さないから………スザクも、ユーフェミア様も、絶対に、絶対に赦さないから…!」

残っていた誰もが、何も言えなかった。ユーフェミアを異常に慕っているニーナでさえ、何も。

その日は、結局沈黙が破られることはなかった。

 


裏切りの騎士全ての始まり(7年前のこと)も忘れて、終わらない虚空(りそう)を抱く)

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無題
なんだか、スザクとユフィに酷いというよりは、ミレイに一番酷い気が
これだとただ視野が狭くて凄い偏見と拒絶感をもった人という、普段の会長とは掛け離れた人に見えてしまうのですが。
今ブリタニアの植民地支配の恩恵を受けている人間が、ブリタニアに住む場所も家族も奪われた日本人を責める資格はないと思うのですが。ミレイは家の為に結婚しなきゃならないけど、明日殺されるかもしれないという恐怖を日々味わっているゲットーの人達よりはよっぽどマシな暮らししてると思うので。
生坂 2008/06/22(Sun)16:23:13 編集
ミレイさん♪
お久しぶりです。この話のミレイさん私はすごく好きですよ。盲目的というか、一番大事な人を奪われてしまって、完全に感情に走ってる感がなんとも言えなくていいです♪たぶん冷静だったらルルと同じように仕方のないことだったとか、生徒会のみんなの前で~とか色々考えられることが全部吹っ飛んじゃった見たいですね。でも、コレまでずっと彼らのことを守ってきた立場としては(特に恋愛感情も持っていそうですし)スザクの態度にプッツン来ちゃっても仕方ないですよね♪
と、何やら纏まりないですが…これからもお体に気をつけて頑張ってくださいね。
明菜 2008/06/22(Sun)19:41:34 編集
無題
ドラマCDのエピソードから推察するに、ミレイさんはルルーシュ達のことを大切に思ってましたから、スザクがルルーシュにしたことを考えるとこのようなエピソードが本編であってもおかしくなかったのかなと思って読ませて頂きました!
スザクはルルーシュがやった事ばかり責めて、自らを省みることは一切しませんからこのような小説みたいなシーンが本編でもあれば少しは、成長するのになと思うと残念でした・・・。
色々、考えさせられるお話でした!!
なな 2008/06/22(Sun)22:28:02 編集
無題
ミレイさんの気持ちはよくわかりますが、この場合は咲世子さんについてはどう思っているんでしょうか。
というか、彼女は今現在どこにいるんでしょう?
きっとルルたちに合流してくれていると信じたいんですが。
NONAME 2008/06/23(Mon)12:15:05 編集
こんなミレイもいいですvv
私は好きですよ、こんなミレイも!
大切なものには盲目的なくらいで良いと思います(ぉい
宝物を奪われたら誰だって激情すると思います!
しかも、奪った相手は無自覚ですから尚更ですよね。
感情的だからこそ、心情が表れててすっごく良いと思います!
大好きですvvv
霧崎睦月 2008/06/23(Mon)22:40:12 編集
無題
こんな風に感情剥き出しなミレイも良いですね。好きです。
普段からテンションが高くて、ヤレヤレ的な企画を考えたりしている彼女ですが、本質は思いやりの強い、人が本気で嫌がる事はしない人だと思いますので。
これは、単純にウザクの無責任極まりない台詞に、主第一主義なミレイの理性がキレちゃっただけですよね。
最後のウザクが…。何とも言えない…。
結局、自分を肯定してくれる人が欲しいだけなんだ。
ユフィなら分かってくれるから何だというのだ。考え方とか一番近いんだから解ってくれはするでしょう。
アレですか。慰めて欲しいのか?
ルルをあんなに悲しませたくせに!!!
スミマセン。暴走しました…。
瑠衣 URL 2008/06/24(Tue)08:44:27 編集
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