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静謐なる柩。
捏造満載コードギアスの自己満足二次創作サイト。現在休止中。復活は未定。
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「謝られるようなことは、されていません。それでは、僕は行くところがあるので」

目を伏せ、返したルルーシュはそのまま朝比奈達に背を向け、目的の場所へ行こうとしたが、明らかにその方角は町。
気がついた藤堂は慌てて引き止める。

「待て、その怪我でどこに行く気だ!?」
「何処って…商店街です。夕飯の買い物がまだですから」
「「買い物っ!?」」

思わず二人揃って絶句した。
買い物。ブリタニアの皇族が、皇子が――――買い物!?
しかも夕飯。まさかとは思うが、いやでも、まさか―――

「…君、自分で食事つくってるの?枢木の方から使用人回されなかったわけ?」
「いえ、全員断らせてもらいました」

あっさり返された言葉に、もはや何も言えない。
確か妹は目も足も不自由だったはずだ。つまりそれは身の回りのことを全て彼がやっていることに他ならない。

「なんでそんな面倒なこと……無駄に意地張ってどうするのさ」
「作り直す羽目になるんですから、どうせ二度手間です。最初から僕がやった方が早いでしょう」
「……日本人が作った食事なんか食べられないって?」

思い出すのはブリタニアの選民思考。
日本人の手なんか借りられない、つまりそう言いたいのだろうか。

険しい顔つきになった朝比奈に、呆れたようにあっさりと、そう、至極あっさりとルルーシュは返した。

「いつ何処で毒が仕込まれているか分かったものじゃないでしょう。身の回りのことに関しても同じです。何をされるか分かったものじゃない。下手に信用できない使用人をおくのは馬鹿のすることです」
「………毒、って。そんなこと、日本人はそんな卑怯な真似…っ」
「…そうか、日本は民主国家でしたね。仮に首相や名の知れた軍人とはいえども、あまり馴染みはないんですか」
「まるで、自分は慣れてるみたいな言い草じゃない」
「ええ、あそこではそれが日常でしたから」

そう言って、皇子は諦めたように哂った。

「僕らには、『毒殺』は『事故死』と同義です。殺される方が悪い。そういう考えの場所でしたから。―――何処で何を仕込まれているか、常に疑ってなければ、とっくにこの世にいません。
僕には一通りの毒の耐性がありますが、あの子にはまだ無いんです。僕が確かめればいいだけの話ですから、つけさせる気もありませんけど」

軽く肩をすくめて、踵を返すルルーシュ。しかし数歩進んだところで、妙な顔をしてすぐ後ろにいる朝比奈を見た。

「…なんでついてくるんですか」
「どうせ買い物いったところで碌なもの売ってもらえてないんでしょ?」
「……ですが、貴方には関係ないと」
「俺がついていけばもう少しまともなもの買えると思うけどなー?いいのかな?お兄ちゃんとしては妹にできるだけいいもの食べさせてあげたいんじゃないかと思ったんだけど?」

にやりと笑う朝比奈に、ルルーシュは黙り込んだ。
確かにそうすればすこしはいい食材が買える。でも手は借りたくない。でもでもナナリーのことを思うなら…!

ぐるぐる思い悩むルルーシュを朝比奈は面白そうに見た。
スザクと違ってちゃんとこっちの言葉を受け入れるし、変なところ真面目で面白いかもしれない。なんか見た目可愛いし。
それに葛藤しているのがバレバレなのだが、本人は気付いてないらしい。

そうか鈍いのか、と思いつつ。朝比奈は助け舟もとい自分の欲求を出してみた。

「ていうか材料買ってあげるからさ、俺も君の夕飯食べてっていい?皇子お手製なんてレアだよね」
「……いっしょに?」
「うん一緒に。これならいいでしょ?等価交換…なんだっけ、そっちの言葉で言うならギブアンドテイク?どうも君施し受けるような性格じゃなそうだし、今の状況で人の善意とか信じなさそうだし」

最後の言葉にルルーシュはちょっと顔を歪めたが、それなら大丈夫かと思ったのか、朝比奈の言葉を了承した。
途中からすっかり傍観者になっていた藤堂も、「それなら俺もいいか?」と申し出て、本日の食卓には異国の皇族と軍人というなんともいえない面子が同席することが決定した。

「そういえばさ、君の名前なんていうんだっけ?」
「……忘れたのか朝比奈」
「いえ、一応覚えてますけど。でも君から直接聞いてないし?」

にっこり笑いかけられて、ルルーシュは少し戸惑ったようだった。
こういう風に接されるのは予想外だったらしい。戸惑う様子も結構可愛いなあと密かに朝比奈が思っていたとか。

「………Lelouch」
「るるーしゅ?」

ぽつりと呟かれた流暢な響き。朝比奈は聞こえた通りに聞き返すが、残念ながらブリタニアの言語の読み書きはできても、未だ発音は苦手だったりした。
ルルーシュから向けられた微妙な視線がなんだか痛い。

「…間違ってた?」
「いえ、別にただちょっと……なんでもないです」

なんか間抜けだなあと思わなくなかったが、ルルーシュは黙っていることにした。沈黙は金なり。

「絶対何か思ってるでしょ?」
「ですからなんでもないと言ってるでしょう」

言う気はないようだ。
朝比奈はむむ、と眉を顰めてぶつぶつと呟く。だってしょうがないじゃん難しいんだもん発音。
そしてそのうちにいいことを思いついた。

「じゃああだ名でもつけるとか。ブリタニアでも愛称で呼んだりする?」
「……しますけど」
「うーん、何がいいかな。るー、るるー?しゅ、まで入れたら略じゃないしなあ。苗字なんてブリタニアだし、ミドルネームはヴィだし。ファーストネームから付けるしかないんだけど…ん、あ、そうだ。るーくんってどう?」
「るーくん、って何ですかそれ。普通にルルとかどうしてそういうのに辿り着かないんです!?」
「だって俺日本人だもん。それにルルってなんか錠剤みた…じゃなくて、女の子みたいだし!いーじゃん可愛いじゃんるーくん!」
「可愛いんですかっ!?ならなおさら嫌ですよその呼び方!」
「やだ決定。もう決めた。変更は認めませーん」

さらりと抗議は無視して「ほらいくよー」なんて声を掛けながら、ルルーシュの手を引いて歩き出す。
いきなり動き出されて驚いたルルーシュがなんだか面白い奇声を上げているのを聞いて、笑う。

敵国の皇子だし、弱いし、ちょっと生意気なところもあるけれど。でもその心意気はわりと好きかもしれない。


少し前では考えられないほど良好な雰囲気になった2人を見て、密かに藤堂はほっとした。
だってこれでもしかしたらスザクと朝比奈の仲が緩和されるかもしれないし、少なくともこれからはルルーシュが仲裁に入ってくれそうな感じなのだからして。
いつも被害をもろにくらう藤堂としては嬉しいことこの上ない。もちろん、あの皇子に親しい者が増えたことも喜ばしい限りだが。

そして無事買い物を終えて、ルルーシュの料理の出来栄えに驚いたり、ますますルルーシュが気に入った朝比奈がその日から構い倒すようになり、いつの間にか2人がどんどん仲良くなったり、というか仲良くなりすぎたりするのだが、それはまた別の話しということで。

 

 

 

(ねえ、ちょっと待って。住んでるところってここ!?だって皇族だよねるーくん。でもここどう見ても土蔵にしか見えないんだけど!?
ただでさえ妹が体不自由なんでしょ?生まれつきで世話に慣れてるとしてもここで生活するのはキツいんじゃ――――え、後天的?
母親が暗殺されたときに足を撃たれて、目は精神的なもので見えなくなったって……えええええ。
それって君たち被害妄想でも何でもなく相当……え、同情は結構って。………そっか、健気なんだねるーくん。俺すごく誤解してたんだね。
よしよし、これから俺のことお兄ちゃんって呼んでもいいよー。
え、嫌?何人いると思ってるんだって?…そっか、そうだねいっぱいいたね)

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るーくんは健気な子です!
分かっていましたが、健気ですよね。るーくん。

当時のルルーシュには無条件の行為ほど胡散臭いものは無かったでしょう。
自分の身を守るのは自分。
肉体的な外傷は、ルルーシュにとってはきっと、取るに足らないものなんですね。
何より大事なのはナナリーの安全だから。
10歳の子供が毒に慣れるなんてありえないよ(泣)
多分皇室では使用人なんかは勿論、皇族からの贈り物(特に食べ物)が一番危険だったのではないかと思います。

朝比奈さんはこうしてるーくんと呼ぶようになったんですね。納得。
道場にルルーシュが来ると、朝比奈さんが「るーくん!」と抱きつく姿が目に浮かびます。
ついでにスザクと朝比奈さんは藤堂さんだけでなく、ルルーシュの取り合いも行われるようになってのではないかと、勝手に思っています。

「なんでルルーシュにそんなにくっ付いてるんだよ!!」
「別に良いじゃないか。るーくんも別に嫌がってないし」
みたいな会話が二人でなされていればイイ!
スザクが絞られていたら尚イイ!
瑠衣 2008/05/29(Thu)18:59:58 編集
無題
朝比奈さんがルルに酷い事言ってるーっ
と、最初思いながら読んでました。
すごいですね長いですね。というかはやいですね~。
読み手としては嬉しい限りです。

最後の朝比奈さん一人のセリフもちょっとつぼりました。
今のらぶーな感じもいいですけど、ちょっと警戒気味なるーくんとの関係も素敵ですよね!
省吾さんが押せ押せ気味ですかね?
あれ、そういえばいつから省吾さんって呼んでたんでしょう。

サンホラはですね、黒の預言書あたりから調べ始めてたのですが。
実は最近ちょっと熱が冷めてたんですよねー。
というのも、なんか物語的なものに行き当たってしまいまして。
……これ、歌じゃないよ。
みたいな感じで、途中で調べるの止めちゃったんですよね。
それまでに見つけた好きな感じの曲はばっちり今でも聞いてるんですけど。
最近はニコ動を使うことも覚えたので、また収集してみようかと思ってますv
何かお勧めな曲があったら教えてくださいね!ぜひ!
五百蔵 2008/05/29(Thu)19:01:18 編集
初めまして
今晩は、暫く前から通わせて頂いている咲と申します。今回初コメントです。宜しくお願いします。このおはなしで一番に反応したのは錠剤……笑いました。そうですね!ありましたね、ルルと言う風邪薬!ルルに看病されれば風邪なんて吹っ飛ばせそうですが。きっと効果は同じですよ!

暫く錠剤が抜けなさそうです、あはは……。

では初コメントがこんなのですみません……
失礼します!
URL 2008/05/29(Thu)20:25:36 編集
気になる!
るーくんと呼ぶ過程に錠剤のルルとは朝比奈さんってば正直者vv
だからルルーシュも心を開くのですね。
前後共に読ませて頂きましたが、始めは朝比奈さん酷い!と思ったのですけれども、最後はルルの話に納得し一緒に買い物に行ったなんて、彩霞さんの書かれる話は本当に間が気になります!!
臣近 2008/05/29(Thu)21:44:27 編集
無題
大好きでするーくんシリーズ!!
こんな小説がかけるなんて、
もうすごすぎます
2008/05/29(Thu)22:17:56 編集
無題
 
こんなに上手く小説を書けるなんて羨ましいかぎりですよ。
私なんて駄文しか作れないもんですから尊敬します。マジで。

ロロルル楽しみにしてます^^


それにしても…

ぶはっ(*´∀`*)錠剤ネタきたよ。グッジョブ!(ぇ


アレですね、日本人(イレヴン)の風邪にはルルが効……(死ね!(←ギアス発動)ぎゃああ…)


(↑ごめんなさい)
Lily 2008/05/29(Thu)23:45:11 編集
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