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静謐なる柩。
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朝比奈は、誰が見てもわかるくらいに不機嫌だった。
共に帰路に就いていた藤堂にもそれは分かる。
ある程度原因にも予想はつくが、しかしその原因をどうにかすることは無理だ。

(……選択を、誤っただろうか)

密かに藤堂は思ったりした。口にはしなかったが。
他の四聖剣の3人の中から選べば、内心朝比奈と同じように憤っていようとも、ここまで直接的に示さなかっただろう。

そう、今の状況に至る原因で、思い当たるのはただ一つ。
『枢木スザクの師範』となり、軍務の代わりに指導にあたっていること、…あたらざるをえないことだろう。
周りの者達が手を焼いていたスザクに気に入られ、本人からできるかぎり自分の修行をつけれてくれ強請られていることも一因な気もする。
道場には他の者もいるのだ。ひたすらスザクにばかり稽古をつけてやるわけにはいかない。
しかし、いくら優秀とはいえ、藤堂は軍人なのだ。上官命令は絶対である。
だから自分の代わりに、腕の立つ朝比奈を軍のほうからよび、他の者達に稽古をつけてやってくれるよう頼んだのだが…

(あそこまで朝比奈とスザク君の馬が合わないとは……)

仙波だったら、年長者の余裕でスザクと喧嘩するようなことはなかっただろう。
卜部だったら、あれで結構兄貴分的なところがあるので、スザクの言葉も軽く流す程度の度量がある。
千葉は……とりあえず、女性であるから男ばかりの道場に呼ぶことは却下するとして。

しかし、藤堂が呼んだのは朝比奈だった。純粋に実力で選んだのが拙かった。
朝比奈は稽古の方には問題無いのだが、藤堂を独占しているスザクに対する敵愾心を隠そうともせず、父親の立場と生まれつき高い身体能力のせいで特に誰に意見されることなく、大分自分勝手に育っているスザクももちろん負の感情を隠そうとはしない。

2人の仲は良好とは言いがたいというか、険悪というか、―――正直に言えば、最悪だった。
いつ手が出てもおかしくない。むしろ今まで出なかったのが奇跡だ。

いつまでこれが続くのだろうか、と思わず遠い目をしていた藤堂は視界を過ぎった光景に、目を見開いた。

「あれは…っ」
「? 藤堂さん、どうし……」

朝比奈が不思議そうにしているが、藤堂は今見えたものの方へ向かうことを優先した。
なぜなら今見えたのは、藤堂の見間違いでなければ、それは間違いなく。

「何をしているッ!?」
「わあっ!?」
「に、逃げろっ」

散っていく子供達。中には中学生…下手したら、高校生くらいの者まで含まれている。
そしてその子供達に囲まれて、暴行を加えられていたのは、何度かスザクと共に道場に顔も出したこともある黒髪の少年。
日本人にはありえない白すぎる肌に、皇族にしか現れないという紫の瞳。

「大丈夫か、ルルーシュ皇子!?」

日本に留学生として送られてきたルルーシュ・ヴィ・ブリタニア以外の、何者でもなかった。

「……有り難う御座います、藤堂中佐。そちらの方は…確か、朝比奈さん、でしたか」

蹲ったままでは失礼だと思ったのか、ボロボロの体で立ち上がろうとするルルーシュ。
元の色素が薄いからか、殴られた後がよけいに目立っている。血が出ている場所さえみられた。

「構わない。それよりも手当てを…」
「結構です。僕は大丈夫ですから」
「しかし…」
「平気です。それに、貴方達には関係の無いことですから」

ルルーシュは至って冷静に返す。その瞳には不審と警戒の色がある。
これ以上食い下がっても、この幼い皇子が申し出に頷くようなことはないだろう。
そう判断した藤堂は、気が進まないながらも大人しく見て見ぬフリをすることに決めた。
必要以上に干渉したところで、それはマイナスにしかならない。
10歳の子供が既にそのことを悟っているのが遣る瀬無く、今の状況と合わせて鑑みればあまりに痛々しかったが、どうにかできることではない。

「……そうか、失礼した。それでは、我々はこれで」
「あのさー」

ルルーシュに背を向けようとしたその時、藤堂を追ってきて、黙って話を聞いていた朝比奈が唐突に口を開いた。
藤堂は眉を顰め、朝比奈に視線を向ける。
何を言うつもりだ、と思ってることは見て取れるが、朝比奈はあえてそれに気付いていないフリをしてみせた。

「君ってさあ、あーいうことされてもあのクソガキが絶対助けてくれるって信じてるの?」
「別に、そんなことは…」
「じゃあ何で抵抗しないの?俺には黙って殴られてただけに見えたけど。逃げようともしてなかったよね」
「…仕方の無いことですから。この程度のことなら、僕が我慢すればいいだけのことです」
「この程度の、ね」

朝比奈は前述したとおり不機嫌だった。機嫌が直るような出来事なんて何一つ起こっていないのだから当たり前だ。
それにさっきの様子を見て気の毒だと思わないことも無いが、そもそも自分で状況を何とかしようと足掻いているようには見えなかった。
自分で動こうともしない奴は嫌いだ。さらにいえば、スザクと仲がいい、というだけで気に食わない。
よって朝比奈は嫌悪を隠そうともせず、鼻で笑ってみせた。

「へえ、何?もしかして自分って可哀相、とかって自己陶酔にでも浸ってるわけ?」
「朝比奈!!」
「…俺、間違ったこと言ってないじゃないですか。藤堂さん」

拗ねたように唇を尖らせる朝比奈はあからさまに不満そうだ。
とにかく藤堂は、朝比奈をこの場から引き離すことに決めた。
ただでさえ何の力になれないというのに、これでは追い討ちをかける一方だ。

藤堂に「戻るぞ」と声をかけられた朝比奈は「はーい」とやる気なさげに返事を返し、もう1度ルルーシュを振り返る。
正直気に食わないことこの上ないが、彼はそもそも滅多に会うことなんて無い。なら、朝比奈にはどうでもいい。
なので、これが最後のつもりで吐き捨ててやった。

「まあ、せいぜい部屋に引き篭もってでもいれば?少なくとも、今みたいに目障りにウロウロしなければ、痛い目に遭うことは無い―――」
「―――それは、できません」

きっぱりと返されて、虚を衝かれた朝比奈はしばらくぽかんとしていたが、我に返り、訝しげな表情になる。

「…何、そういう嗜好でもあるの?そうじゃないなら、わざわざうろついてボコられたりする必要なんてないよね」
「生憎とそういう嗜好はありませんが…町を出歩く必要はありますから、了承できません」
「―――は?」

わざわざ、町をうろつく理由なんて何処に。
朝比奈には理解できなかった。藤堂にもよく分からなかったようだ。
じっとルルーシュを見ていると、続きを言うように促されているのが分かったのか、ぎゅっと眉を寄せる。
多分、話すつもりはなかったのだろう。ここで話を終わりにして、去るつもりだったのだ。
しかし朝比奈も藤堂も、答えを聞くまで逃さない、と態度で分かる。
暫くの間逡巡して、ルルーシュは口を開いた。

「僕たちが、留学生と称してこの地にいることは、誰もが知っています。ブリタニアに対して日本人がどういう印象を持っているか、理解しているつもりです。
僕らが姿を見せなければ、僕らの情報を全く持っていない人々は好き勝手に僕たちのことを想像するでしょう。
マイナス以外の何者でもないブリタニアへの印象をしっかりと反映して。
そして『ブリタニアの皇族』という『未知の存在』を勝手に警戒して、恐怖して、―――そのフラストレーションはいつか、必ず爆発します。当然、悪い意味で。
だから、此処にいるのは【同じ人間】の【幼い】【子供】だと、そういう情報を直接与える必要があります。
人は未知の存在であれば恐怖し、すぐに排除したがる生き物です。
ですが少なくとも、僕の外見を見れば、自分達を脅かすようなことができるとは思うことはないでしょう。何処からどう見ても、僕は、唯の無力な子供でしかありませんから―――」

―――そんなこと、考えもしなかった。
しかし、言われてみればその通りだ。朝比奈も藤堂も、直接会うまで日本に来る皇子皇女を好き勝手に思い描いていた。
実際予想より幼く、ただの子供でしかなかったため、戸惑った。『皇族』が来ると知らず知らずのうちに気を張っていたのだ。

嫌味のつもりで言った言葉に正論で返され、またその理由に納得はしたが、それでもまだ朝比奈は態度を改めようとはしなかった。

「でも、それは無抵抗な理由にはならないんじゃないの?」
「………抵抗して、それでどうするんです?」

「仕方がないことだ」とも言いそうなその様子にかちんとくる。
要は諦めているだけだろう、と言い返そうとした朝比奈の言葉を遮ったのは、またしても考えもしなかった言葉だった。

「ブリキのくせに生意気だ、と僕らの住んでいる場所にまで押しかけてこないと言い切れますか。あそこにはナナリーがいるんだ。これ以上あの子が傷つく必要なんてどこにも無い!
…僕がおとなしく殴られていれば、彼らはそれで満足してそれ以上のことはせずに帰ります。そのことであの子の安全が少しでも保証されるなら、僕が我慢すればいいだけです」

毅然として言い放たれた言葉に、愕然とした。
別にルルーシュは朝比奈が考えていたような理由で何もしなかったわけではなかったのだ。

耐えるのは、ただ妹の為に。
そしてこれ以上の状況悪化を防ぐために、より確率の高い手段を選んでいるだけだった。

この自分より一回り小さい皇子が思う『最悪』は自分に何かされることではない。
あくまでも『妹』を守ることが優先であって、それはまるで彼は自分がなにかをされる分には構わないと思ってるかのようで。

「………悪かったよ」

朝比奈は、自分の非を認めることにした。
少なくとも先入観で勝手に嫌いなタイプだと思っていただけであって、彼自身は何も悪いことなんてしていなかったから。
態度が気に食わないと思ったのは確かだけれど、言われてみれば彼がとっている手段は彼の目的――『妹を守る』ことに関して、今取れる最善の手だと納得せざるをえなかった。

自分の身をどうでもいいと思っているような点が見受けられる節は、少々納得いかないけれど。

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切ないな…。
ルルーシュは大人顔負けの考え(しかも正論)を持っているから、純粋に口論になったら、言い負かされそうです。
言い分はとても子供の考えることではなくて、切ないのですけども…。
ってか、朝比奈さーん。
幾ら気が立っているからって、子供に突っかかっていくのは大人気ないですよ。
ウザク…、失礼。スザクの相手は確かに大変です。言い分も何も全部自分が中心ですから。
私もうっかり「このガキ!」と思うことが多々ありますね。朝比奈さんが不機嫌になるのは分かります。寧ろ同情すらします。

ルルーシュは10手先まで考えて行動する感じがしますので、基本的には話せば理解するタイプですよね。
瑠衣 2008/05/29(Thu)18:34:37 編集
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