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静謐なる柩。
捏造満載コードギアスの自己満足二次創作サイト。現在休止中。復活は未定。
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「謝られるようなことは、されていません。それでは、僕は行くところがあるので」

目を伏せ、返したルルーシュはそのまま朝比奈達に背を向け、目的の場所へ行こうとしたが、明らかにその方角は町。
気がついた藤堂は慌てて引き止める。

「待て、その怪我でどこに行く気だ!?」
「何処って…商店街です。夕飯の買い物がまだですから」
「「買い物っ!?」」

思わず二人揃って絶句した。
買い物。ブリタニアの皇族が、皇子が――――買い物!?
しかも夕飯。まさかとは思うが、いやでも、まさか―――

「…君、自分で食事つくってるの?枢木の方から使用人回されなかったわけ?」
「いえ、全員断らせてもらいました」

あっさり返された言葉に、もはや何も言えない。
確か妹は目も足も不自由だったはずだ。つまりそれは身の回りのことを全て彼がやっていることに他ならない。

「なんでそんな面倒なこと……無駄に意地張ってどうするのさ」
「作り直す羽目になるんですから、どうせ二度手間です。最初から僕がやった方が早いでしょう」
「……日本人が作った食事なんか食べられないって?」

思い出すのはブリタニアの選民思考。
日本人の手なんか借りられない、つまりそう言いたいのだろうか。

険しい顔つきになった朝比奈に、呆れたようにあっさりと、そう、至極あっさりとルルーシュは返した。

「いつ何処で毒が仕込まれているか分かったものじゃないでしょう。身の回りのことに関しても同じです。何をされるか分かったものじゃない。下手に信用できない使用人をおくのは馬鹿のすることです」
「………毒、って。そんなこと、日本人はそんな卑怯な真似…っ」
「…そうか、日本は民主国家でしたね。仮に首相や名の知れた軍人とはいえども、あまり馴染みはないんですか」
「まるで、自分は慣れてるみたいな言い草じゃない」
「ええ、あそこではそれが日常でしたから」

そう言って、皇子は諦めたように哂った。

「僕らには、『毒殺』は『事故死』と同義です。殺される方が悪い。そういう考えの場所でしたから。―――何処で何を仕込まれているか、常に疑ってなければ、とっくにこの世にいません。
僕には一通りの毒の耐性がありますが、あの子にはまだ無いんです。僕が確かめればいいだけの話ですから、つけさせる気もありませんけど」

軽く肩をすくめて、踵を返すルルーシュ。しかし数歩進んだところで、妙な顔をしてすぐ後ろにいる朝比奈を見た。

「…なんでついてくるんですか」
「どうせ買い物いったところで碌なもの売ってもらえてないんでしょ?」
「……ですが、貴方には関係ないと」
「俺がついていけばもう少しまともなもの買えると思うけどなー?いいのかな?お兄ちゃんとしては妹にできるだけいいもの食べさせてあげたいんじゃないかと思ったんだけど?」

にやりと笑う朝比奈に、ルルーシュは黙り込んだ。
確かにそうすればすこしはいい食材が買える。でも手は借りたくない。でもでもナナリーのことを思うなら…!

ぐるぐる思い悩むルルーシュを朝比奈は面白そうに見た。
スザクと違ってちゃんとこっちの言葉を受け入れるし、変なところ真面目で面白いかもしれない。なんか見た目可愛いし。
それに葛藤しているのがバレバレなのだが、本人は気付いてないらしい。

そうか鈍いのか、と思いつつ。朝比奈は助け舟もとい自分の欲求を出してみた。

「ていうか材料買ってあげるからさ、俺も君の夕飯食べてっていい?皇子お手製なんてレアだよね」
「……いっしょに?」
「うん一緒に。これならいいでしょ?等価交換…なんだっけ、そっちの言葉で言うならギブアンドテイク?どうも君施し受けるような性格じゃなそうだし、今の状況で人の善意とか信じなさそうだし」

最後の言葉にルルーシュはちょっと顔を歪めたが、それなら大丈夫かと思ったのか、朝比奈の言葉を了承した。
途中からすっかり傍観者になっていた藤堂も、「それなら俺もいいか?」と申し出て、本日の食卓には異国の皇族と軍人というなんともいえない面子が同席することが決定した。

「そういえばさ、君の名前なんていうんだっけ?」
「……忘れたのか朝比奈」
「いえ、一応覚えてますけど。でも君から直接聞いてないし?」

にっこり笑いかけられて、ルルーシュは少し戸惑ったようだった。
こういう風に接されるのは予想外だったらしい。戸惑う様子も結構可愛いなあと密かに朝比奈が思っていたとか。

「………Lelouch」
「るるーしゅ?」

ぽつりと呟かれた流暢な響き。朝比奈は聞こえた通りに聞き返すが、残念ながらブリタニアの言語の読み書きはできても、未だ発音は苦手だったりした。
ルルーシュから向けられた微妙な視線がなんだか痛い。

「…間違ってた?」
「いえ、別にただちょっと……なんでもないです」

なんか間抜けだなあと思わなくなかったが、ルルーシュは黙っていることにした。沈黙は金なり。

「絶対何か思ってるでしょ?」
「ですからなんでもないと言ってるでしょう」

言う気はないようだ。
朝比奈はむむ、と眉を顰めてぶつぶつと呟く。だってしょうがないじゃん難しいんだもん発音。
そしてそのうちにいいことを思いついた。

「じゃああだ名でもつけるとか。ブリタニアでも愛称で呼んだりする?」
「……しますけど」
「うーん、何がいいかな。るー、るるー?しゅ、まで入れたら略じゃないしなあ。苗字なんてブリタニアだし、ミドルネームはヴィだし。ファーストネームから付けるしかないんだけど…ん、あ、そうだ。るーくんってどう?」
「るーくん、って何ですかそれ。普通にルルとかどうしてそういうのに辿り着かないんです!?」
「だって俺日本人だもん。それにルルってなんか錠剤みた…じゃなくて、女の子みたいだし!いーじゃん可愛いじゃんるーくん!」
「可愛いんですかっ!?ならなおさら嫌ですよその呼び方!」
「やだ決定。もう決めた。変更は認めませーん」

さらりと抗議は無視して「ほらいくよー」なんて声を掛けながら、ルルーシュの手を引いて歩き出す。
いきなり動き出されて驚いたルルーシュがなんだか面白い奇声を上げているのを聞いて、笑う。

敵国の皇子だし、弱いし、ちょっと生意気なところもあるけれど。でもその心意気はわりと好きかもしれない。


少し前では考えられないほど良好な雰囲気になった2人を見て、密かに藤堂はほっとした。
だってこれでもしかしたらスザクと朝比奈の仲が緩和されるかもしれないし、少なくともこれからはルルーシュが仲裁に入ってくれそうな感じなのだからして。
いつも被害をもろにくらう藤堂としては嬉しいことこの上ない。もちろん、あの皇子に親しい者が増えたことも喜ばしい限りだが。

そして無事買い物を終えて、ルルーシュの料理の出来栄えに驚いたり、ますますルルーシュが気に入った朝比奈がその日から構い倒すようになり、いつの間にか2人がどんどん仲良くなったり、というか仲良くなりすぎたりするのだが、それはまた別の話しということで。

 

 

 

(ねえ、ちょっと待って。住んでるところってここ!?だって皇族だよねるーくん。でもここどう見ても土蔵にしか見えないんだけど!?
ただでさえ妹が体不自由なんでしょ?生まれつきで世話に慣れてるとしてもここで生活するのはキツいんじゃ――――え、後天的?
母親が暗殺されたときに足を撃たれて、目は精神的なもので見えなくなったって……えええええ。
それって君たち被害妄想でも何でもなく相当……え、同情は結構って。………そっか、健気なんだねるーくん。俺すごく誤解してたんだね。
よしよし、これから俺のことお兄ちゃんって呼んでもいいよー。
え、嫌?何人いると思ってるんだって?…そっか、そうだねいっぱいいたね)

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朝比奈は、誰が見てもわかるくらいに不機嫌だった。
共に帰路に就いていた藤堂にもそれは分かる。
ある程度原因にも予想はつくが、しかしその原因をどうにかすることは無理だ。

(……選択を、誤っただろうか)

密かに藤堂は思ったりした。口にはしなかったが。
他の四聖剣の3人の中から選べば、内心朝比奈と同じように憤っていようとも、ここまで直接的に示さなかっただろう。

そう、今の状況に至る原因で、思い当たるのはただ一つ。
『枢木スザクの師範』となり、軍務の代わりに指導にあたっていること、…あたらざるをえないことだろう。
周りの者達が手を焼いていたスザクに気に入られ、本人からできるかぎり自分の修行をつけれてくれ強請られていることも一因な気もする。
道場には他の者もいるのだ。ひたすらスザクにばかり稽古をつけてやるわけにはいかない。
しかし、いくら優秀とはいえ、藤堂は軍人なのだ。上官命令は絶対である。
だから自分の代わりに、腕の立つ朝比奈を軍のほうからよび、他の者達に稽古をつけてやってくれるよう頼んだのだが…

(あそこまで朝比奈とスザク君の馬が合わないとは……)

仙波だったら、年長者の余裕でスザクと喧嘩するようなことはなかっただろう。
卜部だったら、あれで結構兄貴分的なところがあるので、スザクの言葉も軽く流す程度の度量がある。
千葉は……とりあえず、女性であるから男ばかりの道場に呼ぶことは却下するとして。

しかし、藤堂が呼んだのは朝比奈だった。純粋に実力で選んだのが拙かった。
朝比奈は稽古の方には問題無いのだが、藤堂を独占しているスザクに対する敵愾心を隠そうともせず、父親の立場と生まれつき高い身体能力のせいで特に誰に意見されることなく、大分自分勝手に育っているスザクももちろん負の感情を隠そうとはしない。

2人の仲は良好とは言いがたいというか、険悪というか、―――正直に言えば、最悪だった。
いつ手が出てもおかしくない。むしろ今まで出なかったのが奇跡だ。

いつまでこれが続くのだろうか、と思わず遠い目をしていた藤堂は視界を過ぎった光景に、目を見開いた。

「あれは…っ」
「? 藤堂さん、どうし……」

朝比奈が不思議そうにしているが、藤堂は今見えたものの方へ向かうことを優先した。
なぜなら今見えたのは、藤堂の見間違いでなければ、それは間違いなく。

「何をしているッ!?」
「わあっ!?」
「に、逃げろっ」

散っていく子供達。中には中学生…下手したら、高校生くらいの者まで含まれている。
そしてその子供達に囲まれて、暴行を加えられていたのは、何度かスザクと共に道場に顔も出したこともある黒髪の少年。
日本人にはありえない白すぎる肌に、皇族にしか現れないという紫の瞳。

「大丈夫か、ルルーシュ皇子!?」

日本に留学生として送られてきたルルーシュ・ヴィ・ブリタニア以外の、何者でもなかった。

「……有り難う御座います、藤堂中佐。そちらの方は…確か、朝比奈さん、でしたか」

蹲ったままでは失礼だと思ったのか、ボロボロの体で立ち上がろうとするルルーシュ。
元の色素が薄いからか、殴られた後がよけいに目立っている。血が出ている場所さえみられた。

「構わない。それよりも手当てを…」
「結構です。僕は大丈夫ですから」
「しかし…」
「平気です。それに、貴方達には関係の無いことですから」

ルルーシュは至って冷静に返す。その瞳には不審と警戒の色がある。
これ以上食い下がっても、この幼い皇子が申し出に頷くようなことはないだろう。
そう判断した藤堂は、気が進まないながらも大人しく見て見ぬフリをすることに決めた。
必要以上に干渉したところで、それはマイナスにしかならない。
10歳の子供が既にそのことを悟っているのが遣る瀬無く、今の状況と合わせて鑑みればあまりに痛々しかったが、どうにかできることではない。

「……そうか、失礼した。それでは、我々はこれで」
「あのさー」

ルルーシュに背を向けようとしたその時、藤堂を追ってきて、黙って話を聞いていた朝比奈が唐突に口を開いた。
藤堂は眉を顰め、朝比奈に視線を向ける。
何を言うつもりだ、と思ってることは見て取れるが、朝比奈はあえてそれに気付いていないフリをしてみせた。

「君ってさあ、あーいうことされてもあのクソガキが絶対助けてくれるって信じてるの?」
「別に、そんなことは…」
「じゃあ何で抵抗しないの?俺には黙って殴られてただけに見えたけど。逃げようともしてなかったよね」
「…仕方の無いことですから。この程度のことなら、僕が我慢すればいいだけのことです」
「この程度の、ね」

朝比奈は前述したとおり不機嫌だった。機嫌が直るような出来事なんて何一つ起こっていないのだから当たり前だ。
それにさっきの様子を見て気の毒だと思わないことも無いが、そもそも自分で状況を何とかしようと足掻いているようには見えなかった。
自分で動こうともしない奴は嫌いだ。さらにいえば、スザクと仲がいい、というだけで気に食わない。
よって朝比奈は嫌悪を隠そうともせず、鼻で笑ってみせた。

「へえ、何?もしかして自分って可哀相、とかって自己陶酔にでも浸ってるわけ?」
「朝比奈!!」
「…俺、間違ったこと言ってないじゃないですか。藤堂さん」

拗ねたように唇を尖らせる朝比奈はあからさまに不満そうだ。
とにかく藤堂は、朝比奈をこの場から引き離すことに決めた。
ただでさえ何の力になれないというのに、これでは追い討ちをかける一方だ。

藤堂に「戻るぞ」と声をかけられた朝比奈は「はーい」とやる気なさげに返事を返し、もう1度ルルーシュを振り返る。
正直気に食わないことこの上ないが、彼はそもそも滅多に会うことなんて無い。なら、朝比奈にはどうでもいい。
なので、これが最後のつもりで吐き捨ててやった。

「まあ、せいぜい部屋に引き篭もってでもいれば?少なくとも、今みたいに目障りにウロウロしなければ、痛い目に遭うことは無い―――」
「―――それは、できません」

きっぱりと返されて、虚を衝かれた朝比奈はしばらくぽかんとしていたが、我に返り、訝しげな表情になる。

「…何、そういう嗜好でもあるの?そうじゃないなら、わざわざうろついてボコられたりする必要なんてないよね」
「生憎とそういう嗜好はありませんが…町を出歩く必要はありますから、了承できません」
「―――は?」

わざわざ、町をうろつく理由なんて何処に。
朝比奈には理解できなかった。藤堂にもよく分からなかったようだ。
じっとルルーシュを見ていると、続きを言うように促されているのが分かったのか、ぎゅっと眉を寄せる。
多分、話すつもりはなかったのだろう。ここで話を終わりにして、去るつもりだったのだ。
しかし朝比奈も藤堂も、答えを聞くまで逃さない、と態度で分かる。
暫くの間逡巡して、ルルーシュは口を開いた。

「僕たちが、留学生と称してこの地にいることは、誰もが知っています。ブリタニアに対して日本人がどういう印象を持っているか、理解しているつもりです。
僕らが姿を見せなければ、僕らの情報を全く持っていない人々は好き勝手に僕たちのことを想像するでしょう。
マイナス以外の何者でもないブリタニアへの印象をしっかりと反映して。
そして『ブリタニアの皇族』という『未知の存在』を勝手に警戒して、恐怖して、―――そのフラストレーションはいつか、必ず爆発します。当然、悪い意味で。
だから、此処にいるのは【同じ人間】の【幼い】【子供】だと、そういう情報を直接与える必要があります。
人は未知の存在であれば恐怖し、すぐに排除したがる生き物です。
ですが少なくとも、僕の外見を見れば、自分達を脅かすようなことができるとは思うことはないでしょう。何処からどう見ても、僕は、唯の無力な子供でしかありませんから―――」

―――そんなこと、考えもしなかった。
しかし、言われてみればその通りだ。朝比奈も藤堂も、直接会うまで日本に来る皇子皇女を好き勝手に思い描いていた。
実際予想より幼く、ただの子供でしかなかったため、戸惑った。『皇族』が来ると知らず知らずのうちに気を張っていたのだ。

嫌味のつもりで言った言葉に正論で返され、またその理由に納得はしたが、それでもまだ朝比奈は態度を改めようとはしなかった。

「でも、それは無抵抗な理由にはならないんじゃないの?」
「………抵抗して、それでどうするんです?」

「仕方がないことだ」とも言いそうなその様子にかちんとくる。
要は諦めているだけだろう、と言い返そうとした朝比奈の言葉を遮ったのは、またしても考えもしなかった言葉だった。

「ブリキのくせに生意気だ、と僕らの住んでいる場所にまで押しかけてこないと言い切れますか。あそこにはナナリーがいるんだ。これ以上あの子が傷つく必要なんてどこにも無い!
…僕がおとなしく殴られていれば、彼らはそれで満足してそれ以上のことはせずに帰ります。そのことであの子の安全が少しでも保証されるなら、僕が我慢すればいいだけです」

毅然として言い放たれた言葉に、愕然とした。
別にルルーシュは朝比奈が考えていたような理由で何もしなかったわけではなかったのだ。

耐えるのは、ただ妹の為に。
そしてこれ以上の状況悪化を防ぐために、より確率の高い手段を選んでいるだけだった。

この自分より一回り小さい皇子が思う『最悪』は自分に何かされることではない。
あくまでも『妹』を守ることが優先であって、それはまるで彼は自分がなにかをされる分には構わないと思ってるかのようで。

「………悪かったよ」

朝比奈は、自分の非を認めることにした。
少なくとも先入観で勝手に嫌いなタイプだと思っていただけであって、彼自身は何も悪いことなんてしていなかったから。
態度が気に食わないと思ったのは確かだけれど、言われてみれば彼がとっている手段は彼の目的――『妹を守る』ことに関して、今取れる最善の手だと納得せざるをえなかった。

自分の身をどうでもいいと思っているような点が見受けられる節は、少々納得いかないけれど。

さてさて、朝比奈から『ルルーシュ』に連絡があってから数日。
ルルーシュはとある場所―――租界とゲットーの境界、とでも言うべきだろうか。そこにに来ていた。
はっきりと境界線が引かれているわけではないが、ちょうど租界とゲットーの間にあるこの場所は夜は『イレヴン』達が暴れたり、麻薬が取引されたりとかなり危険になる。
だが、昼間にうろつく場合ほとんど人がいないので、ブリタニア人がいてもさほど問題は無い。
ギリギリのラインで『租界』であるため、明るいうちから問題を起こせば軍に捕まってしまうからだ。
―――夜になれば、薄汚い大人たちによっていろんなことが黙認されてしまうが。

今はぱっと見ではルルーシュだと気付かれないように、いつもとは違うカジュアルな格好をして、帽子を深めに被っている。
上下共に長袖を着ているため、肌の露出は最小限。それでも、よく見ればその肌の白さからブリタニア人だと分かってしまう。

そのため、ルルーシュの運動神経をよく知っている朝比奈が危惧したのはまずルルーシュの安全だ。
テロも盛んなこの国で、下手にブリタニア人がゲットーをうろついていたら、どんな目に遭うか分かったものではない。
ゲットーの人気が少ないところを選んでも、だからこそ逆に何かされそうというのが朝比奈の主張だ。

ギアスがあるから平気だ、と思わなかったといえば嘘になるが、『切り札』を易々と必要以上に使うのも危険。
朝比奈の意見が最もリスクが少ないと判断したルルーシュは、租界だがある意味ゲットーでもあるこの場所での待ち合わせを了承した。

ちらり。時計に視線をやる。待ち合わせの3分前、そろそろ来る頃だろうか。

 

密やかなるユーモレスク

 

「うわあホントにるーくんだー。改めて会うとなんか夢じゃないって実感するね」
「……第一声がそれですか」

ルルーシュを見つけるや否やぱあっと表情を明るくして駆け寄ってきた朝比奈。
気が付けば腕の中に抱き込まれていたが、幼い頃にさんざんやられていたせいか、全く違和感を感じなかった。慣れって偉大だ。

基本的にルルーシュはナナリー以外による必要以上の接近には身構えてしまう。
ただ、その警戒のレベルがどれだけ顕著に出るか、それだけの違いであり、敵でないと分かっているミレイでも、友達であるスザクでも、反射的に警戒する。
心と体は別物だとでもいうのか。―――これはもはや生存本能に近いものかもしれない。

…にも関わらず、久々に再会した朝比奈に対しては警戒するだけ無駄といわんばかりに。
むしろルルーシュが『抱きしめる』のはともかく、『抱きしめられる』ような相手はいないので、何年ぶりかに全身で感じる人の体温が心地よくすらある。

「だって、好物食べようとしたときに目が覚めた、とかあるでしょ?一番いいところなのに!っていうか」
「…そういう経験は、ないですね」
「え、嘘。うーん、そんなものかなあ…」
「………たら、いいと」
「……ん?」

ごく小さな呟き。微かに拾った朝比奈は、続きを言うよう促す。
目の前にある朝比奈の肩に頭を預けて、ぽつりとルルーシュは言った。

「これが、本当に夢であったなら。それなら、どれだけよかっただろうと…そう思ったことなら、あります」
「……そっか。るーくんは、昔から『逃げない』もんね」

でも、少しは自分の幸せ、夢見てもいいと思うよ。

そう優しく耳元で囁かれ、照れを隠すかのようにルルーシュはぐりぐりと額を押し付けてやった。
生憎と朝比奈にダメージは与えられていないようだが、とりあえず今の顔を見られなければいいということにしておく。

「じゃ、そろそろ行こうか。大分るーくん不足も解消したし♪やっぱりぎゅーってしてると落ち着くんだよねえ」
「不足って…ああもう、重いですから程々にして下さいよ」
「はーい。善処はしまーす。で、場所が分かったら…っていうよりも行き方が分かったら困るから、電話でも言ったように目隠しをさせてもらいたいんだけど」
「まあ、当然の判断ですが…目を閉じるだけじゃ駄目なんですか?」
「念のためだよ。嫌かもしれないけど、安全の確保の為だと思って。…どういう意味かは分かってるよね?」
「確かに、『ブリタニア人』である俺が情報を得たりすれば、団員の人に殺される可能性は高いですね。それこそ、目隠しをした状態で負うリスクより、目隠しをしなかったせいで負うリスクの方が遥かに高い。そういうことでいいんでしょう?」
「相変わらず頭の回転速いなあ…うん、そういうこと。俺としてもるーくんには死んで欲しくないし、ちゃんと俺が先導するから我慢してもらいたいなー」
「……わかりました。それで、目隠しは?」

今の朝比奈の格好は、どこにでもありそうなシャツにジーンズ。あとは頭にバンダナを巻いていた。
どれも生地はあまり上等なものではなく、ゲットーで手に入れた物だろうと予測できる。
『四聖剣』はそれなりに有名だが、全員個人としては藤堂ほど顔や名前が売れているわけではないため、おそらく大抵の人はゲットーで暮らしているイレヴンだと思うだろう。

ぱっと見、何も持っていないように見えるのだが…

「あ、そうそう。はいこれ、アイマスク」
「…………あの」
「ん?なに?」
「なんで、目が書いてあるんですか?しかもいかにも少女漫画的な」
「実はそれ昔宴会で誰かが芸した時に使ってたやつなんだよね。いやー、アイマスクってそれしかなくって」

そして、わくわくとその宴会芸用のアイマスクを付けるのを待っている朝比奈から、ルルーシュは無言でバンダナを取り上げた。

「こっちのバンダナでお願いします」
「え、なんで?別にこれでも…」
「お願いします」
「えっと…」
「―――省吾さん?」
「…はーい」

朝比奈は渋々アイマスクをポケットにしまって、ルルーシュの後ろに回って、バンダナで目を覆った。

「どう?苦しくない?」
「大丈夫です」

きつすぎず、かつ緩すぎず。
丁度いい具合に結ばれているのを確認して、そういえばこの人昔からわりかし器用だったなあ、とルルーシュは思った。

「それにしても、どうやって連れて行こうかな。声掛けて注意促すだけじゃ絶対転ぶよね…」
「…それは、馬鹿にしてるんですか?」
「違う違う。結構瓦礫とかもあるし、平坦な道でもないから、普通に危ないと思うよ」

確かに、正論である。でもなんだかルルーシュは釈然としなかった。
絶対に「それにるーくんだしなー」とか思っているだろうことも理由の1つにに違いないと思うので。

とりあえず朝比奈はちょっと考えて、思いついた案を述べてみた。

「あ、俺がお姫様抱っこして運ぶとか!」
「却下!そんな恥ずかしいことできますか!!目立つでしょう!?」
「え、でもるーくんなら違和感なさそっていたたたた!ごめん足踏まないで痛いってば!」
「笑えない冗談なんか言うからです」
「……本気なんだけど…いや、なんでもないです。ごめんなさいごめんなさい踏まないで!」

思いっきり踵をねじこまれて、流石に朝比奈も悲鳴をあげた。いくら鍛えているとはいえども、痛いものは痛いのだ。
それにしてもピンポイントで痛かった。もしかしてピンヒールとか履いたことあったりするのかなあ、と朝比奈は思う。体重の掛け方が実に的確だ。

「ええと、それじゃあ、手を繋いでいくとか?」
「……まあ、いいでしょう」
「じゃあそれでいこうか。手、出して」

言うとおりに右手を少し上げる。


ふと、頭を過ぎるのは、薄暗いゲットーの廃墟。
助けた友達。
差し出した手。
返されたのは否定。

何度も必死に伸ばした腕は、握り返されることもなく。

そして、アイツは今―――


ぱし、と音を立てて手を摑まれる。

「ほら、行くよ?」

手から、朝比奈の体温が伝わって来る。
あの時とは違い、しっかりと握り返された、手。

「?何笑ってるの?」
「いえ、別に…なんでも、ないですよ」

今繋がれている手に、ちょっとあったかい気持ちになったなんて。
そんなことは言えないので、ひとまず自分1人だけの秘密にしておこうと思った。


ところで、2人は昔の名残か全く疑問に思ってないが、普通は男2人手を繋いで歩いていたら結構目立つ。
目撃した者がおらず、それを誰にもツッコまれなかったことは幸なのか不幸なのか。
とりあえず、今は2人とも普通に幸せそうなので、それでいいのかもしれない。




(それにしてもさあ)
(なんですか?)
(傍から見て目隠しってぶっちゃけ何プレイかと思われ、ってだから踏まないでってばー!)

書き上げました!ちょっと長いかもしれません。
渋くてカッコイイ原作通りの藤堂さんが好きな人はやめといた方がいいと思います。
若干、いや多大に?壊れてますから。

なんとか藤ルル(♀)になりました!

今回は完全ギャグです。
いろいろと流してる部分もありはするんですが、見逃しておいてください☆
そのうち機会があったら補完しますので。

課題をやってたら話を書く暇が全くとれませんでした。
やっぱり毎日更新は無謀だったようです。二日連続で執筆時間どころか睡眠すらあやしい。
朝の3時とか4時までやってたので滅茶苦茶眠いです。
やっぱり一週間平均してせいぜい4時間程度の睡眠はきつい…
課題を溜め込んで提出直前に処理する癖のある自分のせいだとはわかってるんですが、やっぱり量が多すぎるとも思うんですよね。


とりあえず長くなりつつあるので途中でぶった切ってます。
後編は書きかけ。今日中に上げるつもりです。

前編の時点ではオールキャラ?でCPなしですが、後編は藤ルルの予定。むしろ藤→ルルですが。
無駄にルルはにょた設定です。これも後編で生きてくる設定のはず!

ちなみにギャグです。後編で藤堂さん若干壊れます。というか壊します!
前編ではまだまとも…かな?
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