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静謐なる柩。
捏造満載コードギアスの自己満足二次創作サイト。現在休止中。復活は未定。
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(―――“起きて、しまった”)

朝、眠りから覚めた僕の胸によぎったのは、この言葉だった。
別に低血圧というわけでもなく、昨夜夜更かししたというわけでもない。
ただ至って普通に起きて、そう思ってしまったのだ。

そう、“普通”―――

今ライがいる客間も普通の部屋だった。
普段使われていないのか、必要最低限の物しか置かれていないが、置いてある家具などは豪華でもなく、質素でもなく“普通”。
日当たりも特別いいとは言わないが、悪いわけでもなく、広さだって“普通”だった。

なのに、どうしてこんなに違和感を覚えるのか。

借りた部屋だからとかそういう理由じゃない。
言うならば、ライの周りに“普通”があるのがおかしいというか―――

そんなことを考えるのは明らかに“異常”だ。
わかっている。わかっているのに。
感じる違和感と、それに付加する疑問が胸のうちで渦巻き続ける。

どうして、ここは暗い■■じゃないんだろう。
どうして、体を自由に動かせるんだろう。

―――どうして、僕は目覚めているんだろう。


( そ ん な こ と 、 ゆ る さ れ る は ず が )


コン、コン。

「!」

扉を叩く軽い音が、そのまま何処かへ沈んでしまいそうになった僕の意識を浮上させた。

「ライさま、朝食の用意ができました」
「…あ、はい。すぐ、行きます」

咄嗟に返事を返し、気付く。

そうだ、ここは『クラブハウス』。
ナナリーと咲世子さんがいて、ここでお世話になることになったんだった。

「……そう、か」

きっと、この違和感は人の家に泊まったせいだ。
僕はそう自分に言い聞かせることにした。

薄々気付いてたのかもしれない。
もしこのまま思考を続けても、答えが出ることはないのだと。


咲世子さんの足音が遠ざかっていく。

それを聞いてから僕はぱん、と軽く頬を叩き、気持ちを切り替える。
部屋に置いてあった服に着替えて、脱いだものもちゃんと畳んでおく。
ある程度身だしなみが整ったのを確認して、部屋から出た。

クラブハウスの内部構造は一通り説明してもらっているため、迷うことなくリビングへと向かう。

そしてリビングのドアを開けて―――

「咲世子さん?もうナナリーを連れてき―――ッ誰だ!?」

……知らない人がいた。
咲世子さんとナナリーの名前を呼んでいるということは2人の知り合いなんだろうけど、誰だろう。

ぼんやり考えていると、その人は僕の前に歩いてきて、胸倉を掴みあげて言った。

「一体何が目的だ…!あの子に手を出したりしたら、ただで済むと思うな!!」

黒髪にアメジストのように深い紫の瞳を持つ僕と同じくらいの年頃だろう少年。
肌は白く、日本人――イレブンということはないだろう。
黄色人種というより白人種。となるとやはりブリタニア人か。

じっと彼を観察し、推測を立てる僕の態度をどうとったのか。
彼は僕から乱暴に手を離すと、すっと左手で左目の瞼をなぞる。

「だんまりか?まあいい…言わせれば済むことだ。さあ、俺の質問に答え―――」
「お兄様?どうかなされたのですか?」

彼の瞳が紅く染まったかのように見えた瞬間、ナナリーの声が聞こえた。
すると彼は先ほどまでのことが嘘だったかののように瞬時に表情も声色も優しいものに変えて、「なんでもないよ、ナナリー」と返した。

瞳の色は、紫色のままだった。さっきのは、目の錯覚だったのだろうか。

咲世子さんに車椅子を押され、ナナリーがリビングへと入ってくる。
―――『お兄様』。つまり、彼はナナリーの兄だったわけか。

「それで、ナナリー。すまないが、俺はちょっとやることがあるから、朝食は先に―――」
「おはよう、ナナリー。咲世子さんも、おはようございます」
「っ!?お前……ッ」

僕もナナリーの方へ一歩近づき、挨拶をする。
無視する形になったナナリーのお兄さんには悪いが、お世話になる以上挨拶をするのが礼儀だろう。
目を見開いて硬直した彼とは対称的に、ナナリーはにっこり笑って挨拶を返してきた。

「おはようございます、ライさん。よく眠れましたか?」
「ああ、快適だった。感謝するよ。それでえっと…こちらの、彼だけど。お兄さん?」
「あ、忘れてました。そうです、ルルーシュおに…」
「お前に『お兄さん』などと呼ばれる筋合いは無いッッ!!」

……沈黙。

「あー…その……す、すまない」

僕には非は無いと思うのに、思わず謝ってしまった。なんだか今にもナナリーのお兄さんに殺されそうだ。
だが、なにか勘違いした彼の暴走は止まらなかった。

「いいか、何処の馬の骨かは知らんが、ナナリーはやらんからな!」
「いや、そうじゃな…」
「というか本当にお前は誰だ学園の生徒じゃないだろう!」

それは僕が聞きたい。
思わずそう思ってしまった僕に罪はないはずだ。

「ルルーシュ様、ライ様は記憶喪失なのです。それで、ミレイ様からこちらで世話をするように頼まれまして」
「そうなんです。ですからお兄様、ライさんと仲良くしてくださいませんか?」
「会長が…?」

流石に困ってしまった僕を見かねたのか、咲世子さんが助け舟を出してくれた。
続いてナナリーも僕のフォローをする。
それを聞いたナナリーのお兄さんはしばらく思考に耽ったかと思うと、さっきまでの態度はなんだったのかと思うほど爽やかな、こう…なんというか、背後がキラキラしているような、そんな笑みを浮かべた。

「そうか、勘違いしてすまなかったな。俺はルルーシュ・ランペルージ。ナナリーの兄だ。よろしくな」
「あ、ああ。僕はライだ。こちらこそ、よろしく」

ぎこちないながらも返事を返すと、ナナリーは「よかったです!」と笑う。
咲世子さんが「それでは朝食にいたしましょうか」と言って、ナナリーの車椅子を押して、テーブルの方へと向かっていった。
僕も2人に続こうとすると、背後からルルーシュに肩をがしりと掴まれる。

「お前がナナリー達の優しさにつけこんで何をしようとしてるかは知らないが、そうそう上手く事が運ぶと思うなよ…?
見てろ、今にお前の正体を暴いてやる。記憶喪失なんてベタな嘘に俺は騙されないからな」

ルルーシュはものすごく低い、それこそ魔王のような声音で囁くと、何事もなかったかのような顔をして僕を追い越し、テーブルへと向かう。

思わず固まっていた僕は、頭を抱えて天を(というか天井を)仰いだ。
……これから先、僕はやっていけるんだろうか。ものすごく不安だ。

しかし現実から逃げても何も変わりはしない。
ひとまず僕は気合を入れなおし、(そもそも朝食というのは気合がいるものだったか?)テーブルへと向かうのだった。

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深い闇の中をたゆたう。
そこには何もない。そこには何もいらない。
僕のせいで■■■…いや。僕が■した人たちの、■■の、そして■■■■の“代わり”なんてどこにもないから。

僕は…もう何も、求めない。

ただ僕は、眠り続ける。
■■■の■■で僕が■してしまった■■の記憶を抱いて、深く、深く。

それは僕が背負うべきモノ。
それは僕は遺すべきモノ。

そして、どこにもない■■の代わりに、僕がずっと覚えていなければならない記録。

忘却は許せなかった。
■は許されなかった。

だから、可能な限り、永く、深く。

ただ、闇の中で眠り続ける。


―――いつかそれすら許されなくなるとは、思っていたけれど。

(こんな。こんなことを、望んでいたわけじゃない…)

望まなかったモノを与えられ、望んだモノを奪われ。
僕は、声無き悲鳴を上げ続けることしかできなかった。

(やめろ、やめてくれ)

『■■で発見されたこれはおそらく■■■■と同種の者の■■■だと思われます』
『それはそれは…興味深いことじゃないか』
『では…』
『ああ、お前達に任せよう』

ただ、これ以上誰かを■■ことなく、眠りたかっただけなのに。
        
『V-01、■■■■成功です』
『そうか、そのまま続けろ』

無理矢理に“与えられた”変化。
それは苦痛だった。不快だった。
そして―――絶望だった。

(やめろ)

欲しいのは■じゃない。
    
(いらない)

新たな■■でもない。

『それにしても、あの方も皮肉な呼び名をつけなさったもんだ』
『そうですね。確か―――でしたっけ』
『まあ、ある意味お似合いといえばお似合いだけどな』

(―――だめだ)
欲しいのは、守りたいのはそんなものじゃない。
そんなものの代償に、喪うわけにはいかない。

そうだ。
なによりも許せないのは、許してはいけないのは、

『え、本当に■に干渉しちゃっていいんですか?』
『かまわん。やれ』
『下手したらいろいろ消えちゃうかもしれませんけど』
『馬鹿か、そのときはまた■■■■ばいいだけのことだろ』

(やめろ―――!)


換  え  る  な

ノイズが奔る。
欠けていく。零れていく。刻まれていく。換わっていく。
僕が、“僕”の生きてきた全てが。全てが、塗りつぶされていく。

そして―――

 


「―――っ!」

急に意識が浮上し、覚醒へと導かれる。
周囲にあるのは、予期した暗闇ではない。
かといって“あの場所”でもない。

「…ここ、は」

自分がいる場所はいわば普通だった。
あまりに“普通の空間”だった。

さらに自分は拘束されているわけでもなく、ただベッドに寝かされているだけのようだ。
特に何かをされたというわけではないらしい。
変化をあえていうならば、着ていた服を着替えさせられているくらいか。

(でも、なんでこんなところに…)

例え武器をもっていなくとも、危害を加えられたわけではないといっても(加える気は別に無かったが)、
明らかに自分は不法侵入をした不審者以外の何者でもなかったと思うのだが。

しかし、それは歓迎すべき事だろう。
意識を失ったとはいえ、今まで身体が何より欲していた休息を取ることができたのも事実だ。

体を起こし、立ち上がる。そしてドアから出ようとした、その時。

「あら、もう起きてたの?体の具合はどうかしら?」

意識を失う前に見た、金髪の女性が部屋へと入ってきた。
あの時一緒にいた車椅子の少女と、メイドらしき女性も傍に控えている。
自分のタイミングの悪さを呪いながらも、とりあえず礼を述べておく。

「僕を此処に連れてきてくれたのは君みたいだな。ありがとう、おかげで大分よくなった」
「やだ、気にしなくていいのよ?で、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「…聞きたいこと」
「別に軍に通報するとかそんなんじゃないわよ。でも、何処の誰かくらい教えてくれても罰は当たらないと思わない?」

彼女はそう明るく言って、軽くウィンクしてみせた。
それから笑顔で片手を僕のほうに差し出す。

「私はミレイ。ミレイ・アッシュフォードよ。今は貴方が倒れてからだいたい1時間、ってところかしら?」
「……」

なお無言である僕の態度をどう受け取ったのか、ミレイさんは車椅子の少女の方を見て、「ほら、ナナちゃんも」と促す。

「初めまして。あの、私はナナリー・ランペルージと言います。こちらはメイドさんの咲世子さんです」
「篠崎咲世子と申します。どうぞよろしくお願いしますね」

にっこり。

笑顔で少女と女性は…訂正。ナナリーと咲世子さんは僕の方を見る。無論ミレイさんもだ。

…先手をとられてしまった。これでは名乗らざるを得ないじゃないか。

「僕は…」

その続きを口にしようとして、目を見開く。

わからな、かった。
僕は誰なのか。何処に住んでいるのか。家族は。人種は。思想は。
そう、僕の…“僕”に関することが、綺麗に抜け落ちている。

何故。だって、おかしい。こんな、―――どうして!?


混乱し、硬直した僕の様子を見て、彼女たちも何かを感じたらしく、それぞれ顔を見合わせていた。


「…もしかして、分からないのかしら?」
「……」

恐る恐る、といった感じで尋ねてくるミレイさんに、沈黙でもって答える。
ミレイさんはすっと表情を真面目なものに切り替えると、「いくつか聞きたいんだけど」と質問し始めた。

「貴方は何人かしら?日本人?それともブリタニア人?もしくは他の…」
「……」
「家族構成は分かる?何人で暮らしていたとか」
「……」
「好きなもの。または嫌いなもの。いっそ趣味とかでもいいわ」
「……」
「…此処は何処だか、分かる?」
「…それはどういう意味でなんだ?」

ようやく声を返した僕に、ミレイさんは「そうねえ」と悩む。
…どうやら、残りの2人は静観することを決めたようだ。ただ黙って僕らの様子を見ている。

「…じゃあ。ここはなんて国かしら?」
「旧日本。…今はエリア11だな」
「日本人はなんて呼ばれている?」
「イレヴン、と」
「日本の国旗の意味は?」
「日の丸、だな」
「和菓子といえば」
「饅頭や羊羹、牛皮や練り切りなんかじゃないか」
「ブリタニアの国是」
「要は弱肉強食だろう」
「…話しているのはブリタニア語よね」
「……そういえば、そうだな」

余計にわけが分からなくなったようだ。
おそらく一般常識、そして国の文化に対する理解度で、僕がどこまで覚えているのか、
どこの国の者なのか調べようという意図の質問だったのだろう。
しかし、僕は今どちらの質問にも難なく答えている。
ブリタニア語を当たり前に話すブリタニア人の容姿なのに、エリア11にも詳しい。
我ながら、一体自分は何なんだと思わずにはいられない。

思考が少なからず顔に出ていたのか、ミレイさんはちょっと表情を緩めて苦笑した。

「KMFって何か分かる?」
「ナイトメアフレームの略称。現在開発されているのは第七世代まで」
「じゃあATP」
「…アデノシン三リン酸。いわば人の細胞のエネルギー源」
「酵素が一定以上の温度で失活する理由」
「蛋白質によって構成されているため熱変性が起きて性質が変わってしまうため」
「サクラダイト」
「レアメタルの一種で、フジ周辺で多く発掘されるとか」

それからもいくつか質問をして、どうやらミレイさんの中では何か結論が出たようだった。

「多分、記憶喪失の一種ね。自分に関することだけごっそり抜けてるみたいだわ」
「記憶喪失、ですか…?」

それまでずっと黙って僕たちの会話を聞いていたナナリーが、不思議そうに声を返す。

「だって、一般常識とか文化とかに関しては普通以上に答えるのに、ちょっとでもプライベートに触れると駄目なのよ?
そういうパターン、本とかでよくあるじゃない」
「そういえば、ありがちなパターンではありますね」

ミレイさんと咲世子さんはその説で納得したらしい。
ナナリーはそれを聞いて、困ったように「大変です…」と呟いた。

「何が大変なのですか?ナナリー様」
「だって、お名前が分からないのでしたら、この方をなんとお呼びすればいいんでしょう?」

……それもそうだ。

そしてふと、先ほどまで見ていた夢を思い出す。
ところところノイズが入って詳しく覚えていないが、確か“あいつら”に僕は―――

「…Ramshackle Abiding Ideal V-01」
「え?今、なんておっしゃったんですか?」
「……いや、ライとでも呼んでくれ」

とっさに思い浮かんだ言葉の頭文字を繋いで答えていた。
だが何故か、告げた名は予想以上にしっくりきた。

「ライさん、ですか。素敵なお名前です」
「うんうん。いい名前じゃない♪」

2人は僕の名前を褒めてくれた。咲世子さんも柔らかく笑っている。

「それじゃあ、本当に世話になった。服は…いつか、必ず返す。ありがとう」

言って、そのまま玄関を探しに行こうとする僕の手を、慌ててミレイさんは掴んだ。

「ちょ、ちょっと待ちなさーい!貴方、何も分からないのに何処にいこうとしてるの!?」
何かアテでもあるわけ!?」
「いや、それは無いが…でも、これ以上迷惑をかけるわけには」
「もう!そんなこと気にしなくていいのよ!うちはそれなりにお金持ちなんだし、人が一人増えたくらいどうってことないわ!」
「しかし…」

頷こうとしない僕に痺れを切らしたのか、ミレイさんは「いいから、ここに居なさい!」とごり押しする。
僕は救いを求めてナナリーと咲世子さんの方を見たが、思わぬ所から止めが刺された。

「でしたら、クラブハウスに住んだらいかがですか?きっと、楽しいと思います」
「……ナ、ナナリー?」

ミレイさんはその発言に目を輝かせて、高らかに宣言した。

「ナナちゃんナイスアイディア!それ決定!ライ、貴方はこのクラブハウスで生活しなさい!
 これは貴方を拾った恩人としての命令よ!」

決定的だった。

「ちょ、待っ……」
「さーて、そうと決まれば男子用の制服おじい様に頼んでおかなくちゃね!
 言っておくけどライ、いたいけな乙女の願いを無碍にして、泣かせたりしたら許さないわよ~?」
「泣かせっ!?いや、だから僕は…」
「ちなみに反論は受け付けませーん!じゃあまた明日ね!」

満面の笑みを浮かべて、足取り軽やかにミレイさんは去っていった。
僕は暫く呆然としていたが、ぎこちない動きでナナリーと咲世子さんを振り返る。

「それじゃあ、明日からライさんも学校に通うんですね!とっても楽しみです!」
「そうですね、ナナリー様。それではライ様、夕食に致しましょう。すでに準備できておりますので」
「咲世子さんはお料理とってもお上手なんですよ。きっとライさんも喜んで下さると思います」
「まさか食事を放って、出て行く…なんて、仰いませんよね?」

―――もはや、僕に抵抗する術は残っていなかった。

こうして僕は咲世子さんお手製の夕食を頂き、なんだかんだで言いくるめられ、
このクラブハウス及びアッシュフォード学園(というのだとナナリー達が教えてくれた)でお世話になることとなった。


…ちなみに、咲世子さんの料理は確かにすごく美味しかった。

気が付くと、“僕”は走っていた。
ただひたすらに。がむしゃらに。
息を切らせて、僕は走っていた。

何故走っているのか。

わからない。
でも一方で分かっていた。
この足を止めてはいけないのだと。

何故“走らなければならない”のか。

わからない。
それでも、足を止めるわけにはいかなかった。

ハッ、ハッ、とまるで獣のように息が弾んでいる。
乳酸漬けになった体は、重くてだんだんと動かなくなり始める。

僕はどのくらい走っていたんだろうか。
ふとよぎる疑問の答えさえ、僕は持ち合わせていなかった。

僕は“誰か”から逃げているのだろうか。
それとも“誰か”を追っているのだろうか。

次々に浮かんでくる疑問。
そして増えていく“わからないこと”でわかる自らの空虚さ。

「―――っ!?」

さらには、警告だとでもいうのか、時折頭に奔るすさまじい痛み。

そろそろ限界が近いことには感づいていた。
ただでさえ疲労が蓄積した体に、止めを刺すかのようなひどい頭痛。
すでに揺らぎ始めた意識の中、ぼんやりと思う。

ああ、そうだ。
“誰もいないところ”へ行かなければ。

何故そう思ったのかはわからない。けれど確かにそうしなければならないと思ったのだ。

しかし、走る自分の周りを過ぎていくのは見覚えのない風景。
そう、何処へ行けばいいのかなんて、分かるわけもなかった。

必死に辺りを見回して、大きな建物を見つけた。
もう夜だからなのか、他に比べて人の気配は薄い。

それを理解すると、僕は躊躇うことなくその場所へと駆け出した。

大きな門から中に入ると、敷地内には、正面の大きな建物とは別の小さい建物も存在した。
そちらの方が人が少ないだろうと判断した僕は、小さい建物(といっても大きい建物に比べて、だが)の方へと向かうことにした。

(少しだけでも、休息をとらないと…)

建物まであと少し。無意識に身体が力を抜きかけた瞬間、声が聞こえた。

(人・・・・・っ!?)

咄嗟に近くの茂みに隠れる。

「にしてもビックリよねー。ゼロだっけ?あの格好にもびっくりしたけど、まさか本当に助けちゃうなんてねぇ?」
「そんなにビックリしてしまうような格好をなさっていたのですか?」
「うん、あのファッションセンスはもしかしたらルルちゃんと張るかもしれないわね!
 いちいち動作も芝居がかってたし、もし失敗してたらいい笑いものでしょうねー」

振り向くと、金髪の女の人と、車椅子に乗った亜麻色の髪の少女が談笑しながら歩いてきていた。
気付かれていないことに安堵しながらも、誰かが来る可能性を考慮しなかった自分に歯噛みする。

(馬鹿か僕は・・・当然じゃないか、ここに誰も来ないなんて保障は何処にも無かった。
 ならば今の状況を想定することは十分可能だったはずだ。 
 どうする?今からでも他に隠れ場所を・・・・・)

そして、気付かれないままにその場を去ろうとした、その時だった。

「う、ぐ・・・っ」

突然、今までの比ではない激痛が奔る。
ぐらりと世界が揺れ、目の前がちかちかと明滅する。
身体のバランスを保つことができずに、僕はその場に倒れこんでしまった。
茂みに隠れていたのだから、当然周囲の枝や葉に身体が触れ、盛大に音を立てる。

(しまった・・・!)

「誰か、いらっしゃるのですか?」
「みたいね。ね、ちょっと見てきていいかしら?」
「はい。かまいません」

僕がいることに気付き、金髪の女の人が近づいてくる。

(どうする、身体は動きそうにない。どうする!?)

僕の中で何かが突き抜けるような感覚があった。
そして、僕は彼女に―――

(違う!!)

咄嗟にその感覚を遮断する。
今、一体僕は何をしようとした!?

「ちょっと君、この学園の生徒じゃないわよね?
 こんなところで一体何を―――」

女の人が何かを言っているのが聞こえた。しかし、どこかその声は遠かった。
つまり、激痛が身体を苛む中、無理矢理妙な感覚を止めた僕は、もう限界だったのだ。

「え、ちょっとどうしたのよ!?」

ぷつり、とまるでモニターの画面が途切れるように。
僕の意識はそこで綺麗にブラックアウトしたのだった。

※ゲーム本編と違って枢木スザク強奪事件当日に脱走し、ミレイさんとナナリーに発見されたことになっています。
黒の騎士団ルートとギアスルートを中心として進めていく予定ですが、各ルートの要素がちょこちょこでるかもしれません。
正直捏造甚だしいです。
主人公の回想シーンとかそのあたり完全オリジナルです。
それを踏まえて「別にOK!」という人だけ読んでくださればよろしいかと。

あと、最初のあたりルルーシュがちょっと冷たいです。多分朝比奈もかな?
でも最終的にライ総受けになる予定。(でもルル相手の場合はどうだろう・・・)

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