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静謐なる柩。
捏造満載コードギアスの自己満足二次創作サイト。現在休止中。復活は未定。
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すいません 大 暴 走 しました!でも実は反省してな(ぉぃ
HI-Littl Star の臣さまの短編藤にょたルルにときめいてしまって。
婚約者とか、婚約者とか!可愛いですもう藤堂さんってばロリコン!(何)

で、ちょっと書いちゃいました。
今思えば藤堂さん救助のシーンでルルが藤堂さんを怒るシーンは多々あれど、逆に藤堂さんがルルだと見破って怒るのは見たことないなと!(そりゃあな!)
やっちゃった感がありますが、初めに言ったとおり反省はしてな(強制終了)

臣さまの小説の続編というべきか、派生というべきか。
でも勝手に書いちゃったので、臣さまから駄目出しあれば即下げます。
ところどころ設定とか過去シーンの台詞とか借りちゃいました。すいません。

そんなわけで臣さまに捧げちゃおうと思います!
ぶっちゃけ彩霞は捧げモノ初めてなのでどうしたらいいかわかりません!
メールですか、メールで送ればいいんですか!?

ええとそんなわけで!臣さまよろしければどうぞ!相互記念ということで。(遅)
ちなみに返品も削除も可ですのでご遠慮なく。何も分かってない素人でホントすいません。
…うぅ、事前にやっぱり質問にいくべきだったですかね……orz
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「行政特区日本の設立を、宣言します!」

湧き上がる歓声。『イレヴン』となっていた者達を中心に、爆発的にざわめきは音量を増した。
興奮に包まれる周囲とは対称的に、今こうして傍の屋台の影に息を潜めているしかない自分達。
今までゼロとして活動してきた全てを無駄にされたと、ユーフェミアに対する怒りもある。でも、それ以上にルルーシュは惨めだった。

立場の違いを、見せ付けられるようで。お前など所詮ただの生きた屍でしかないのだと。所詮ゼロなど光にはなりえないのだと!

頬を軽く紅潮させて、ユーフェミアは歓声に応え、行政特区について説明していく。
目を輝かせ、未来には必ず幸せがあるのだと、こうすれば絶対上手くいくと、そう信じているのだろう。

しかし、彼女は気付いているのだろうか。
この宣言に対する批判が起きないのはユーフェミアが皇女だからであり、同時に好意的な反応が多数を占めているのはアッシュフォードが作った学園の元々の校風が開放的で、なおかつ『枢木スザク』のいう『イレヴン』を内包する学園だからこそだということに。

そして、この学園でさえも『イレブン』の存在を認めようとはせず、今も冷めた目でユーフェミア達を見てる者がいることに!

(……いつまでも、この場にいるのは得策じゃない)
そしてナナリーをつれて静かに、気付かれないようにその場を離れていく。
ナナリーは触れたとき、手が震えていたのに気付いてしまっただろうか。
もはやその時自分が感じていたのが怒りだったのか憎悪だったのか、それとも恐怖だったのか、それすら分からない。
ただ、集まった人々から一歩でも離れることしか、それしか考えられなかった。


帰ってきたクラブハウスに、咲世子さんはいなかった。
ナナリーを任せようと思っていたのに何処へ、とルルーシュが探しに行こうとすると、震える声でナナリーはルルーシュを呼ぶ。

「……おにい、さま」
「ナナリー…」
「ねえ、なんでですか?なんで、ユフィ姉様はさっき何を言ったんですか。だって、私言いました。お兄様さえいればいいって。言ったのに。なのに!どうして!?なんで、なんでよりにもよって『此処』で!!」

最初はまだ落ち着いていたが、感情が高ぶったのか、ナナリーの声はだんだんとヒステリックになっていく。
なんで。どうして。そう泣きそうに続けるナナリーにルルーシュは慌てて駆け寄り、抱きしめた。

「ナナリー。大丈夫。大丈夫だから、俺が、ちゃんと護るから、だから」
「逃げましょう?ねえ、はやく逃げましょうお兄様!きっとユフィ姉様はナナリーからお兄様のこと、取り上げるつもりなんです。だってユフィ姉様はスザクさんのことだって、連れて行ってしまった!」
「ナナリー!」
「私、私は、ただ優しい世界が、この優しい『箱庭』が続いてくれれば、それでよかったんです!お兄様と一緒にいられて、笑ってられれば、それで…それだけでいいんです。それが、私の望んだ『やさしいせかい』なのに!」

ルルーシュは一瞬表情を凍らせた。盲目であるナナリーは気付かない。

「ごめんなさいお兄様、ナナリーは悪い子です。ホントは、他の人なんてどうでもいいんです。お兄様さえいるなら、それでよかったんです。もう、我が儘言いません。『やさしいせかい』が欲しいなんて言いません。だからお願いですお兄様、ずっと、ずっと一緒にいてください!」
「ナナ、………っ」

もちろんだよ、と声をかけてやりたかった。かけようとした、その時。

契約。
その二文字が頭を過ぎる。

拘束された少女。交わした契約。殺した義兄。黒の騎士団。ユフィの騎士になったスザク。

ぐるぐるといろんな光景が頭を駆け巡って、声が喉に張り付いて、カタチにならない。

「おにい、さま?」
「……ああ、そうだね。そうだ…俺は、ずっと傍にいるよ」
「…うそ、ですね」
「ぇ」

なんとか搾り出し、いつも通りにかけた言葉は、あっけなく見破られた。

「お兄様、ダメですよ。嘘ついたら。私、分かってます。分かってるんです、お兄様が、私を置いていこうとしてること」
「な、俺はそんな…っ」
「お兄様は、私に『やさしいせかい』を与えて、そのままいなくなるつもりだったでしょう?ダメですよ。ダメです。絶対に、許しません」

―――気付いて。
動揺が隠し切れずに、声にすら現れてしまった。ダメだ、これではナナリーが心配してしまう。

できることならナナリーの願いは叶えてやりたい。もちろんルルーシュだってナナリーの傍にいたい。
しかし、しかしそれでも、犀は既に振られ、全ては始まってしまっている。もう、止まることなど許されはしない。
それにルルーシュは既に人では―――

「『契約』してしまったから。そう思っているんでしょう?」
「!?」

ひぅ、と息を呑んだ音がやけに大きく聞こえた。
信じられない、と。今の己の表情にはありありと書いてあるだろうと予想できる。

「ナナリー、どうして知って…」
「C.C.さんから聞きました。人とは異なる摂理。異なる時間。異なる命。その覚悟があるのなら―――」
「まさか、お前…っ」
「私も、契約したんです。私の願いは『お兄様と一緒にいられること』。大丈夫です。目も、見えます。足だって動くんです。ナイトメアだって、スザクさんにも負けません.
そう、マークネモという私の「騎士の雌馬(Kightmere)」――いいえ、「悪夢(Nightmere)」があれば。私のギアスがあれば。ですからお兄様、連れて行ってください。お願いです、ねえ…っ」

ナナリーの両目からぽろぽろと涙が流れる。何時の間にか、その瞼は開かれ、薄い菫色の瞳が露になっていた。

「……俺は、ゼロだよ」
「知ってます。ですから、私も行きたいんです。黒の、騎士団に」
「ユフィの宣言のせいで、騎士団はボロボロになってしまうだろう。殆ど、いや…誰も残らないだろうな。きっと残るのはC.C.くらいだ」
「でも、私は一緒にいます。一緒に、いたいんです」
「…クロヴィスを、義兄さんを、殺した」
「クロヴィスお義兄様の親衛隊もお兄様のこと殺そうとしたんだって、C.C.さんが言ってました。気づいてなくても、クロヴィスお義兄様はお兄様のこと、殺しかけました。正当防衛です」
「ナナリー、俺は……」
「ダメです。絶対に、絶対に一緒に行くんです」

いやいやと子供が駄々をこねるように、頭を振ってナナリーはルルーシュにしがみつく。
こんなナナリーの態度は何時振りだろう。そう、きっと母さんが生きていたころくらいだ。

懐かしさと同時に、これは何を言っても聞かないだろうという諦観の念が湧き上がる。
それに、ナナリーも既に理を外れてしまったというのなら、ゼロでも構わないと言うのなら、ルルーシュにはナナリーを拒む術なんてないのだ。

「…わかった。ナナリーがそう望むのなら、俺はそれを叶えるよ。―――ずっと、一緒にいるよ。俺の大事な、たったひとりのお姫様」

優しく、籠められるだけの愛情を籠めて。囁けばナナリーは泣くのをやめて、ほっとした顔つきでルルーシュを見上げた。それでも、決して離れまいと言わんばかりに、しっかりとルルーシュにしがみついたままだ。

ナナリーの頭を撫でて、ある程度これからの展望を考えていたルルーシュはぽつりと呟きを落とした。

「アッシュフォードには、悪いことをするな…ここまで、力を尽くしてくれたのに」
「でも、もう『箱庭』は壊れてしまいました。仕方ないです、だって、ここにいたら見つかってしまいます。行政特区日本にだって、参加するブリタニア人なんて珍しいから、メディアの注目の的になるのが分かりきっていますもの」

だからこそ、自分達は参加できないというのに、あの真っ白な義妹は理解してくれないだろう。
その純粋さは時にとても痛いのだと、彼女は知っているだろうか。

―――どちらにしても、もう『ルルーシュ』と『ナナリー』がこれから関わることなんて無いけれど。

「…なにか、持って行きたいものはあるかい?」
「いいえ、お兄様がいてくださりますから」

未だに喧騒が収まらない学園。太陽の光に眩しく照らされて、誰もが楽しそうな表情で。
初めは自分達だけのために作られた箱庭だった。けれど、ほら、こんなにもあの場所は輝いてる。

そう、アッシュフォードもいつまでも自分達のような、落ちぶれた皇族なんかを気にかける必要なんてない。
あそこには、もう自分達なんかよりも価値のある、きらきら光る、綺麗なモノで満ち溢れてるのだから。

裏なんてない笑顔。
惜しみなく注がれる好意。

友達ができた。先生に怒られた。授業をさぼった。お菓子をもらった。お茶会をした。イベントを楽しんだ。

何の策謀も絡まない、ルルーシュとナナリーが密かに続けばいいと願っていた『平和な日常』。
―――あまりに身近にひかりがあったから、思わず手に入るのだと錯覚してしまった。

「さようなら、大好きでした。幸せでした。今まで、ありがとうございました」
「そうだな…きっと、それなりに満たされた日々だった。…もっといられたら、よかった」

「さようなら、私達の『箱庭』」「さようなら、俺達の『箱庭』」


そしてひかりに背を向けて、二人は歩き出した。
だってそれは綺麗かもしれないけれど、隠れて暮らすしかない自分達には強すぎるひかりだ。だから。

 

波乱の学園祭宣言。
その日から、学園のクラブハウスに住んでいた二人の生徒が姿を消した。
荷物や家具などはそのまま残っていたため、初めは兄のいつもの賭け事かなにかだと思われていたが、結局いくら手を尽くしても2人の姿が見つかることはなく、しかし何故かブリタニア軍に捜索届が出されることもない。

―――また、今日も。学園の副会長とその妹の姿を見た者は、いなかった。



(
                                                                                                                                          
(ねえお様、その“行政特区日本(らくえん)”では、心はもう痛くないの?            
 ねえお様、その“ 行政特区日本(らくえん)”では、本当にお兄様と、ずっと一緒にいられるの?)




教室、はずれ。
クラブハウス、はずれ。
食堂、はずれ。
中庭、はずれ。
グラウンド?いや、それはない。
それじゃあ図書室、はずれ。

それじゃあ、今度は。

ロロはゆっくりと、音を立てないように気をつけながら階段を上り、そっと入り口から様子を伺う。

いた。

鐘楼塔の最上階、ぼんやりと風景を眺めているルルーシュ――『兄さん』。
ロロは表情を緩め、そして背後から勢いよく飛びついた。

「兄さん!」

ルルーシュは驚いたようで少しよろめいたが、そのまま戸惑ったようにロロへと視線を向けた。

「わ、どうしたんだロロ?急に抱きついたりなんかして」
「えへへ、なんとなく。…ダメ、だった?」
「そんなことはないさ。ただ少し驚いただけだ。それに慣れてるし」
「……慣れてる?」

ロロは思わず眉を顰めた。

おかしい。確か『ルルーシュ・ランペルージ』の妹『ナナリー・ランペルージ』は目と足が不自由なため、こういった行動には出れないはず。
では生徒会。いやいや、流石に抱きついたりするような光景は見られない。
一番疑わしいのはミレイだが、シャーリーのような女の子にはよくセクハラじゃないかと思うような行為をしてるところは見たことがあるが、異性に対してそういうことを行うことはほぼ無いに等しい。貴族の令嬢だからか、そのあたりはきっちり意識しているようだし。
ロロ自身だって抱きつくなどのスキンシップを積極的に取り始めたのは、ルルーシュが自分に未来をくれると約束してくれてからだ。

「…もしかして、枢木スザク?」
「スザク?…ああ、そういえば、あいつもよく抱きついてくるな」

今もしそんなことされたら反射的に手を叩き落してしまいそうだし、気をつけないとな。
心なしかうんざりした様子で呟くルルーシュに、ロロは首を傾げた。

てっきり奴かと思ったのだけれど、違うらしい。いつも未練たらたらの様子でロロ達『兄弟』の様子を見ているから、そうだと思ったのに。
しかしそこで、ふとロロは気がついた。今目の前の兄は聞き捨てならないことを言わなかったか。

「…『も』?他に抱きついてくる人なんているの?――あ、もしかして」
「多分お前の予想は外れていると思うぞロロ」
「なんで聞かないうちから断言できるのさ」

ムッとした様子を隠そうともせずにいれば、ルルーシュは苦笑して優しく頭を撫でてくれる。
ロロは表面上「子ども扱いしないでよ」と照れてみせるが、内心ではニヤリと笑ってみたり。

まがりなりにも監視役とはいえ、一年間傍にいたのだ。
『ルルーシュ』にはこういう庇護欲をそそる行動が有効で、そうすればロロに優しくしてくれるのだと知っていた。

そんな思惑があるなんて知らないルルーシュは、苦笑したまま続けた。

「お前の知らない人だから、だよ」
「なにそれ。知ってるよ、僕兄さんの監視役だったんだよ?どうせ『魔女』でしょ?」
「ほらやっぱり。残念、間違いだ」
「え」

ぱちぱちと目を瞬く。
やっぱりおかしい。だって、『ルルーシュ』については機密情報局に全ての情報が入ってきていたはずなのに。
唯一例外を述べるならばギアスについてだが、それについてもロロもギアス・ユーザーなので知らされている。
ブリタニア側に情報が入らない、その場所といえば。

「……黒の騎士団?」

いやでも、騎士団はゼロの正体知らないんじゃ。
もしかしてあの仮面被った状態に抱きつく輩がいるのか。騎士団自体が元々不穏分子として危ないが、別の意味で危ない組織じゃないかそれ。

困惑しつつ、おそるおそるルルーシュに問いかける。

「…『ゼロ』に抱きつこうとするような人がいるの?」
「いや流石にそれは………いた、な。神楽耶がそうだな、そういえば」

実はディートハルトとかいう変態もそんなことを企んでいるが、そこはカレンやC.C.達が頑張って撃退してるからルルーシュは知らなかった。
知らないって幸せ!

まあそんなことはおいといて。

「カグヤ…ああ、イレブンのお姫様だったっけ?ブラックリベリオンの時にいたよね。ちょっと映像に映ってた」
「そうだ。本人は俺を旦那だと主張しているな。…まあ契約もあるし、結婚なんてするつもりはないが」
「そうだよね…」

『僕の』兄さんだもんね!と続く言葉は言わなかった。うん、伏せた。
案の定ルルーシュはロロの言葉の裏には気付かなかったようだ。
それどころかちょっと悲しそうに「そうか、お前も契約したんだったな…」と呟き、ぎゅっと抱きしめてくれた。役得!

内心ロロがガッツポーズを決めているとは露知らず。
ルルーシュはよしよしと心ゆくまでロロの髪を撫でていた。だってふわふわ。
ルルーシュが毎日頑張って乾かしてやってる甲斐あって、ふわふわなのだ!
ナナリーの髪もふわふわだったが、咲世子さんが乾かしていたのでちょっと今のロロの髪には達成感だ。俺頑張った!

ルルーシュの方からなんか幸せオーラが漂ってくる。
この人ホント世話好きだなあ、ていうか今のほわほわした表情可愛いなあなんて思いつつ、ロロはルルーシュからのスキンシップを甘受していた。
こうしてべたべたに甘やかしてもらうのは『特別』なのだと目に見えて分かるから嫌いじゃない。むしろ大好きだ。

学園の生徒達からよく羨まれるが、特に最近転校してきたナイトオブセブンがよく向けてくる嫉妬の目が心地いい。
一応は『任務』だからなのか、文句を言うに言えずギリギリしている様子は滑稽で嫌いじゃない。むしろ面白い。
兄さんを裏切ったりするからだ!いい気味!

さてさて、もちろんそんなことを腕の中の弟が考えてるなんて思いもしないルルーシュ。しかしここでうっかり爆弾を投下した。

「結構人の体温って落ち着くだろう?俺もよく抱きつかれたり…その、抱きしめてもらってたりしてたから。なんか、安心するというか」

ぴき、と空気が凍る音がした。

「………誰に?」
「ん?」
「誰に抱きしめてもらったの?僕知りたいなあ兄さん」
「え?ああ、え、なんか笑顔が怖いんだが。どうしたんだロロ」
「いいから答えて。誰に?」

ちょっと行ってサクっと殺ってくるからさ☆とは言わない。言わないけど。でもその羨ましい奴絶対 コ ロ ス !

そして笑顔の圧力に負けたのか、ルルーシュは相手の名前を教えてくれた。
そう、その相手の名前は。

 


「―――『省吾さん』とやらは何処のどいつですか」

今の状況を簡潔に述べよ。
気がついたら騎士団の潜水艦の中に見知らぬブリタニア人らしき少年がいました。おわり。

「…ってオイっ!?何時の間にコイツこんなとこまで入ってきてんだよ!?」
「まさか、場所がバレたのか…!?」
「く、すぐに拘束して…!」
「いいから早く『省吾さん』を出してくれませんか。出してくれたらおとなしく帰りますから」

動き出した団員たちにも、少年は笑顔のまま全く動じない。

「てめ、馬鹿にしてんじゃねえぞっ!」
「ばっ、玉城!」

その笑みをどう受け取ったのか――少なくともいい意味ではないだろう――短気な玉城が少年に殴りかかる。
線の細い少年だ。それに玉城も喧嘩っ早い性格もあって、それなりに力は強い。ああ、吹っ飛ばされる、と誰もが思った。

だが、ふと気がつくと。

「なっ!?」
「いつの間に…」

逆に玉城の首筋にひたりとナイフが当てられていた。
玉城は今の状況が信じられないのと、ナイフの冷たい感触に硬直してしまっている。顔色は良くない。

「さっさと『省吾さん』を出してください。この人殺しますよ?」
「ひぃっ!?ちょ、助け…っ」

笑顔のまま殺人予告をする少年に玉城はもはや半泣きで周りのメンバーに助けを求めるものの、誰もが動けない。てか『省吾さん』って。『省吾さん』ってまさか。

膠着した状況の中、グッドタイミングというべきか、バッドタイミングというべきか。
ちょうど少しラクシャータと話し合っていた藤堂と、それに同伴していた四聖剣が部屋に入ってきた。

「………っ!?」
「なになに~?何起きてるわけぇ?」
「これは、一体…」

明らかに異常な状況を見て、誰もが目を瞠り、表情を険しくする。
だがそれと同時に、バッと朝比奈に元からいたメンバーの視線が集まる。

「え、何。何で俺見るの!?言っとくけど俺、そこの彼と面識ないからね!?」
「だ、だって…なあ?」
「『省吾さん』っていったら、朝比奈さんしか…」
「…そうですか。あなたが『省吾さん』……そうですか。じゃあ」

呟いて、少年はものすごくイイ笑顔を浮かべた。

「死んでくださいっ☆」
「そんな明るく言われても!!?」

動揺しつつも朝比奈は応戦しようとして、そして何故か一瞬で少年は目の前に―――

「―――――C.C.!?」
「お前…契約者か?何で此処に」

少年のナイフを持つ手は、C.C.によって抑えられていた。
だが、少年だけではなく、C.C.までもが一瞬で移動したことに周囲はさらに動揺する。
そして、C.C.の存在に動揺したのは、少年も変わりないようだった。

「………『魔女』…っ!邪魔しないでくれる!?」
「悪いが、そいつは貴重な戦力なんだ。それに私はC.C.だからな、命令される謂れは無い」
「く…」
「で?お前は誰だ?発言からしてルルーシュ絡みの者と見たが」
「るーくんの!?」
「こいつが口にした呼び方はルルーシュしか使わないだろう。で、誰だ」

C.C.に譲る様子は見られない。
少年は軽く舌打ちして、C.C.の腕を振り払う。

「…僕は、ロロ・ランペルージ」
「ランペルージ、って…」
「ええ。僕はルルーシュ・ランペルージの弟ですよ」
「弟?」

ざわり、と周囲がざわめく。

ルルーシュ・ランペルージ。幹部メンバーとは一通り面識がある。
朝比奈と仲がよく、藤堂とも面識のある、カレンのクラスメイトのブリタニア人の少年だ。
だが、どうして彼の弟がこんなところに。

また、他の者とは違う意味で訝しく思ったのが4人。事情を知っている、C.C.、カレン、藤堂、朝比奈だ。

「『ルルーシュ・ランペルージ』に弟はいないはずだけど?いるのは妹だけだよ」
「違いますよ。『ルルーシュ・ランペルージ』には妹なんていません。いるのは弟だけです」

ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアなら、話は別ですけどね?
声には出さず、唇だけで紡がれた言葉に朝比奈はさらに警戒心を露にした。

(こいつ、知って…!?)
「兄さんに甘えてもらえるなんて羨ましい!兄さんは僕のなんだからさっさと消えてください!」

ちょっと待て何だその理由!?

「本当に弟かどうかもわかんないような奴に言われたくないね!だいたいるーくんは俺のなの!勝手なこと言わないでよね!」

普通に返すな朝比奈――っ!?

緊迫感溢れる空気はここにきてなんだかグダグダになりつつあった。シリアスは何処へ行った。
C.C.なんて呆れたように「また余計なものを引っ掛けて…いつになったら自覚するんだアイツ」なんて呟いている。

「うるさいな!兄さんが弟だって言ってくれたんだから僕は弟なんだよ!」
「ああ、そういえば聞いたことがあるな。お前、アレだろう?ナナリーの代役の偽者の」
「…にせもの……?」
「偽者なんかじゃないっ!」
「弟だというのも記憶が書き換えられていた間の話だろうに。……ん、もしかして…そうか、あいつほだされたのか。相変わらず情に弱い」
「ちょっと待ってC.C.!書き換えられたってどういう…」
「そのままだ。ゼロとしてブリタニアに捕まってから記憶を都合のいいように改竄されてそいつらが監視…って、あ」

時が止まった。

「つまり、ゼロってあのボウヤだったわけぇ?」
「あ、あんなに若い子に、俺たちは全部押し付けていたのか…」
「そうか、ルルーシュ君が…そうだったのか。納得だな」
「あの少年がゼロ…」

思わぬところで判明したゼロの素顔。そうか彼が。――その正体に関して思うことは人それぞれのようだ。
ざわつきだした周囲に慌てたカレンはC.C.へと詰め寄った。

「どうするのよ収拾つかなくなっちゃったじゃないのC.C.!?」
「…すまん、お前もあの眼鏡もゼロが誰だか知っていたからつい」
「つい、で済むことじゃないでしょう!?」
「ん?カレンは知ってたのか?」
「あ、……うん。黙っててごめんなさい、扇さん」
「……朝比奈。どうして教えなかった」
「だってるーくんが黙っててくれって。あー、でもなんでるーくんが俺たち助けにくるのに1年も待たせたのか納得。おかしいとは思ったんだよねー。記憶ない上に監視されてたら当然か」
「そうだな。俺たちは、それでも日本のために帰ってきてくれたゼロに…ルルーシュ君に、感謝しなくちゃいけないな」
「同感だ」

そんな感じでなんか本人の知らぬ間にゼロであることがバレたが、なんかいい方向に行っているようだ。よかったねルルーシュ!
だが、お忘れではないだろうか。そもそもこんな事態に陥った原因を。

「……まあ、この展開は予想外だったけど。とりあえず死んでくれないかな『省吾さん』」
「君みたいなガキに『省吾さん』なんて呼ばれる筋合い無いよ。むしろ気持ち悪いからやめてくれる?」
「よかった。実は僕も言ってて気持ち悪かったんです。じゃあ死んでください眼鏡」
「ネーミングセンス無いにも程があるね。ていうかC.C.のパクリじゃないのそれ。それに死なないし。死ぬ気無いし」

2人の周囲はもはや氷点下。幻覚だろうか、なんだか間にバチバチいってるナニカが見える。
もちろんそこに誰も近づこうとは思わなかった。誰だって命は惜しい。

「…ねえ、あの…ロロだっけ?さっきあいつが監視とか言ってなかったC.C.」
「言った。弟役としてルルーシュを見張る役目らしい」
「なんかもう監視の意味無いんじゃないかしら」
「無いな。無節操に誘惑する癖は未だ健在のようだな。しかも無自覚」

ぼそぼそ聞こえてくる会話の内容と現状のあからさまな齟齬に何か思わないでもない。とりあえずそれでいいのかブリタニア。
この場合は取り込まれる監視が悪いのか、それとも陥落させてしまったルルーシュがすごいのか。…おそらくルルーシュがすごいんだろう。

とりあえず団員たちはとばっちりを喰らいたくなかったので、そのすごいルルーシュことゼロを待つことにした。早く来ないかな!


「…おいお前達、一体何を集まって……」
「るーくん!」「兄さん!」
「「どっちの方が好き!?」」
「……何がだ」

                                    

さあ、メシアの御出座しだ!

コメントを予想以上にたくさんいただけたので、また半分も返信書けてません(汗)
よってお詫びにネタ投下。

9話は天子様が可愛かったです。冒頭の朝比奈さん藤堂さんラクシャータそして千葉さんのエプロンにときめき、ルルの悪役っぷりに大爆笑しました。そして「我が兄上」にも笑いました。シュナ様は別格ですか(笑)
ニーナとスザクに関しては、批判入りそうなのでやめときます。
でもとりあえずニーナはもうちょっとTPO考えようね!スザク以上に空気読めなくなりつつあるよ!

えーと、小話、ですけど。多分というか絶対異色CP。
女の子×ゼロ(ルル)ですけど、こんなの書くの私だけだろうなあ(笑)
ちなみに神楽耶にはゼロバレ済みだと思ってください。

そういえばテストは散々でした。英語はギリギリ赤点免れました。平均点20近く下回ってたけど。
数学は…死にました。先生曰く「80がデッドライン。それ以外はいらん。どっか逝け」。無理でした。


それじゃあ、マイナーにもというか捏造にも程がありますが、それでもよろしければどうぞ!

「ゼロ!お前は、お前のやり方は間違ってる!そんな卑怯な方法で手に入れた結果に意味があると思うのか!?」
「予定通り零番隊はルート2を確保、その間に他の団員達は撤退。ああ、藤堂と四聖剣は白兜の足止めを。仕留めることよりも動きを封じることを優先してくれ。余計な被害は避けたい」
『承知!!』

激しく戦いが繰り広げられている戦場。ランスロットから繋がれたオープンチャンネル。
そこから聞こえてくるのは聞こえてくるのは枢木スザクの批判の声で、“黒の騎士団”というよりも主に“ゼロ”に向けられる言葉の刃だ。
しかしそんなものはものともせず、仮面のリーダーは冷静に次の行動を指示する。

不本意ながら、慣れていたのだ。学園でも、戦場でも、スザクによって声高に叫ばれる存在否定。
最初のころは悲しいとか、辛いとかと感じなくもなかったが、もはや麻痺してしまったのか、淡々とした声を出すことができる。

「ああ、それと紅蓮弐式は殿を。団員達の戦闘離脱が確認出来次第、我々も撤退――――」
「大体お前はこんなことをして、両親に申し訳ないと思わないのか!?少なくともテロリストなんかにするために育ててくれたわけじゃないだろう!お前の行為は明らかに両親へ恩を仇で返す、親不孝者のやることだ!そう、お前さえいなければ、世界はもっと…!」
「―――」

ゼロの言葉が、止まった。
それに気付いたカレンは不安そうに呼びかける。

『ゼロ?どうかし…』
「……いや、何でもない。我々も撤退する。カレン、」
『はい!任せてください!』

そして、無事に黒の騎士団は撤退した。
ブリタニア軍の攻撃を受けていたいくつかのレジスタンスの小組織を救出後、吸収。

そう、例え敵将を仕留めたわけではなくとも、紛れもなくこれは騎士団の勝利だった。

 

彼に目覚めたセレナーデ

 

ゼロの無頼のコックピットが開く音が聞こえ、カレンは真っ先に駆け寄っていった。

「ゼロ、お疲れ様です!今日の指揮も、流石でした!被害も殆どありませんでしたし…」
「相変わらずすごいな、ゼロは。今日救出した人たちも騎士団に入ってくれたし、この調子なら、いつかは…」

惜しみなく向けられる賞賛の声。その場にいた団員達の殆どが尊敬と、いくらか縋るような崇拝が混じった目でゼロを見ている。

ゼロについていけば。
ゼロがいるならば。
それなら、いつかは―――

当然だ、そうなるようにしたのはルルーシュ本人。だからこそ、『ゼロ』は結果を出さなければいけない。
結果がなければ、こんな素性の不明な仮面の男についてくるような者はいないのだから。

…そう、だからこそ。卑怯だといくらスザクに言われようとも、この道を違えるわけには、やり方を変えるわけにはいかない。
それに既に自分の手は汚れている。契約を交わした己に、今更引き返す道など。

声をかけてきた者達に適当に返事を返し、ゼロはすぐにトレーラーの自分の部屋へと向かおうとした。
少し、1人になりたかったのだ。
スザクのゼロ批判には慣れたつもりでいたが、流石に『今日』、あんな事を言われるとは。

そして格納庫に背を向けようとしたゼロに、待ったをかけたのは朝比奈だった。

「そういえばゼロ、今日なんか途中で一回止まったよね?どうしたの?」
「あ、そういえば……」
「…大した時間でもなかっただろう。気にするな、特に問題は無い」

そう言われてしまえば、深く問うことはできない。
ゼロのプライベートに関してはどんなに知りたくともそれは許されない。
――それも、騎士団の在り方の一つであるから。

戸惑いつつも大人しく引き下がろうとするカレンの背後から、ふん、と鼻で笑う声が聞こえた。

「枢木スザクの言葉に、何か思うところでもあったのか?」
「……C.C.」

疲れたように、ゼロはその少女の名を呼ぶ。

「何を今更思ったかは知らんがな。アイツがいろいろ言い始めたのは今に始まったことじゃないだろう」
「…お前は、知ってるんじゃないのか。今日が、何の日か」
「今日は別に何の日でも―――ああ、そういうことか」

思い当たるところでもあったのか、あっさりと納得するC.C.の様子に、逆に納得がいかなかったのは団員たちだ。

「どういうことか、聞いていい?ゼロ、君は枢木の言葉の何処に反応したわけ?」
「まさかゼロもやっぱり騎士団は間違ってるとか思って……いえ、すいません。失言でした」
「いい、気にするなカレン。誤解されるような言動をとった私が悪い。もちろん、私は騎士団は間違っていないと思っている。枢木スザクの言う『正しい手段』とやらをとれる者なんて限られているし、そもそもそんなやり方でブリタニアが変わるとも思っていない」
「…騎士団、『は』?」

朝比奈が聞き返さなければ、おそらくそのまま流してしまっていただろう。
その言葉を聞いて、その場にいた団員達は思わずゼロを見る。それは、どういう意味だろうか。

「……『思うところ』、か。そうだな、あえて言うならば」

ゼロらしくない、どこか諦めたようにも感じられる声。

「―――もしかしたら、私が生まれてさえ来なければ、母はしあわせだったかもしれない、と」

予想もしなかった言葉。
思わず顔を見合わせる者、眉を顰める者、そしてゼロのことが何か分かるのかもしれないと少しばかりの期待をする者などと、団員達の反応は様々に別れた。

「母は、美しく、誇り高い人だった。だからこそあの男に目を付けられ、無理矢理孕まされた。その行為は母にとって酷い屈辱だっただろう。でもそれだけなら。もし『私』が生まれなければ、母はあんな所に留まらされることなどなかったかもしれない。…優しい人だったから、それでも私のことを愛してくれたが。きっと、私なんて生まれてこない方が―――」

ゼロが続く言葉を言わなかったのはおそらく意図的だろう。自嘲するかのように紡がれた言葉に、誰も何も言えなかった。
重い沈黙に気付いたのか、ゼロはいつも通りの声で「すまない、お前達には関係無い話だったな」と告げ、踵を返す。

「あの、ゼロ!その…」
「…カレン、私は平気だ。どうやら少し、感傷的になっていたようだ」

心配してくれているのだろう。慌てて何か言おうとするカレンに、気にするなと告げる。

そう、気にする必要なんてない。ただ『今日』だったから、動揺を露にしてしまっただけのこと。
明日になればまたいつも通りのゼロになれる。だって、今日は―――

「―――今日は、“殺された”母の命日だったから、な」

やはり、誰も何も言えなかった。


* * * * * * * * * * * * * * *

「……るーくん」

ゼロの部屋。入室にパスワードが必要なこの場所に勝手に入ってくることができるのは、自分と共犯者の少女、そしてもう1人。
そのもう1人の声が聞こえてくると同時に、ルルーシュの背には慣れたぬくもりがあった。

「…省吾さん、重いから急に抱きつかないで下さいと何度言ったら……」
「るーくんが生まれてきてくれて、俺は嬉しいよ。るーくんと会えて、嬉しい。今、こうして生きていてくれて、すごく嬉しい」

朝比奈はゼロを…否、ルルーシュをぎゅうっと抱きしめたまま、言葉を続けた。

「あんなクソガキが何言おうと、それは事実だよ。変わりない、事実だ。るーくんは、此処にいていいんだよ。生きてていいんだ。ううん、俺が生きてて欲しいんだ。だから、るーくん…」

ああ、なんでこうも上手く言えないんだろう。
朝比奈は自分に苛立ちを感じながらも腕に力を籠める。
もどかしいまでにカタチになってくれない言葉の代わりに、少しでもこの気持ちが伝わればいい。

大切なのだと。大好きなのだと。そう、朝比奈が想っていることを、感じてくれれば。

ルルーシュは暫く沈黙していたが、今まで仕事をしていた机の方から立ち上がり、朝比奈をくっつけたままベッドに移動した。
戸惑いながらも離れるつもりはなかった朝比奈。ずるずる大人しく引き摺られていき、ベッドに背を向けた状態になると、急にルルーシュは腕の中で方向転換して、朝比奈に抱きついた。
まさかルルーシュが抱きついてくると思わなかった朝比奈は、そのまま衝撃でぼすんとベッドに腰を下ろす羽目になった。
流石にルルーシュに押し倒されるほどひ弱ではないので。いや、多分ルルーシュも押し倒そうと思ってやってるわけじゃないと思うが。

ぽかんとした表情を浮かべる朝比奈に、ルルーシュは抱きついたまま拗ねたように顔を背けた。

「……どうせ、あのままの体勢でも疲れますし、省吾さんは離れる気、なかったでしょう」
「…いや、俺が驚いてるのはそこじゃないよるーくん」
「うるさいです。たまには俺だって人肌が恋しくなる時期があったりしてもいいじゃないですか」

そう言ってぴったりくっついてくるルルーシュだが、態度とは裏腹にその手にはあまり力が籠められてはいない。多分、振り払おうと思えば振り払える。よく見れば、手が微かに震えていた。

おそらくこれは“拒絶されること”を前提とした、その上での甘えだ。
そんなに怯えなくても、朝比奈はルルーシュのことを拒んだりしないのに。

それでも、おそるおそるでもルルーシュから伸ばされた手に、少し頬が緩む。多分朝比奈は結構締まりがない表情をしているだろう。
でもそれくらい嬉しいのだ。
『ゼロ』として、『兄』として、精一杯虚勢を張って、『強いフリ』をして生きてきたこの子供にとって、『弱さ』を見せることができる相手なんていない。
妹のナナリーは不安がるかもしれない。
アッシュフォードはいつ裏切るかわからない。
騎士団の者にはそもそも弱いところを見せるわけにはいかない。

枢木スザクは――唯一その可能性はあったが、今は敵。

つまり、ルルーシュがこうして『弱さ』を見せたのは、朝比奈が初めてだ。…あのC.C.とかいう少女はどうだか知らないが。明らかに甘えることに慣れていない様子からもそれが伺える。

つまり、それって、やっぱり。

「~~~~~~~るーくん大好きっ!」
「ふぇっ!?わ、ちょ、省吾さんっ!?」

朝比奈は思いっきりルルーシュを抱きしめ返した。驚いた声が聞こえるけど気にしない。

だって、それはつまり、ルルーシュの中で朝比奈が紛れも無く『特別』だということだ!

基本的に朝比奈が何をしても苦笑して許容してくれるルルーシュだが、もともとルルーシュの性格からして寛容だったので、あまり自分とルルーシュが仲のいい証明にはならなかった。
どちらかといえば、朝比奈の一方通行な好意のような気もしていたのだ。

でも今の状況はどうだ。ルルーシュは、朝比奈に甘えて、頼っている。―――朝比奈、だけに。
なんだか朝比奈はとても優越感を感じた。誰に対してだろう――でも、おそらく、とりわけスザクに対して。

「……省吾さんは、あったかいですよね。なんか、落ち着く…」

こわごわとしていたルルーシュも、手を振り払われなかったことでだんだん安心したのか、気持ちよさそうに猫のように目を細めて朝比奈に擦り寄ってくる。
完全に気を許して甘えてくるルルーシュに、朝比奈は喜びを隠せなかった。だって可愛い!なにこれ欲しい!

(……俺だけのモノにならないかなあ)

密かに朝比奈は思ったが、表には出さなかった。人間の欲は無限なのだから、満たされればまた次が欲しくなるのは当然だ。
このとき感じたのが独占欲だと朝比奈が認識するのはそう遠いことではないだろう。

「ねえ、るーくん。俺思うんだけどさ。多分、間違わない人間なんていないんだよ」

ルルーシュの体がぴくりと反応した。朝比奈は続ける。

「俺だって、今は藤堂さんのこと尊敬してるし、大好きだけどさ。でも最初は目の敵にしてなにかとつっかかってたんだよ?」
「…ホントですか?なんか、考えられません」
「ホントだよ。いろいろやったんだけど、『敵わない』って思い知らされちゃって。多分あのクソガキからすれば『間違った過程』とやらかもしれないけどさ、でも今俺はこうやって、藤堂さんと一緒にいること、後悔したことないよ。
それに、そもそも―――」

ルルーシュの傍にいると言いながら第3皇女の騎士となり、ルルーシュを護ると言いながら傷つけ続ける矛盾したスザク。
その矛盾は、『間違っていない』のか?

それを朝比奈は口にしようと思ったが、やめた。ぶっちゃけ朝比奈にとってスザクはどうでもいいのだ。
ただ、七年前からルルーシュを取り合っていたから、少し意識していただけで。

―――そして今。朝比奈がルルーシュにとって『特別』だと分かった今。
同時に枢木スザクは朝比奈の中で無価値になった。だってもう朝比奈はスザクに『勝った』のだ。ならもうあんな奴どうでもいい。

藤堂鏡志朗は全てにおいて朝比奈に『勝った』。故に朝比奈は藤堂を慕う。
ルルーシュはまた別だ。初めは力を振りかざすのではなく、己にできる最良の手段を見極め、実行してきたところが興味を引いた。

だが、枢木スザクは朝比奈が興味を持つにふさわしいものを何一つ持たず、示していない。
あえて朝比奈の中での立場を言うなら『ルルーシュを奪おうとする者』だったが、その点で既に朝比奈が『勝った』。

「……そもそも?」
「んーん、なんでもない。えへへ、やっぱいいなー、るーくんは」
「?」

やっぱり俺のモノにしたいなあ、とそんな言葉は伏せておいて。
お互いのぬくもりで癒し癒され、しばらく2人はそのまま和んでいたのだった。

離れるころには、ルルーシュも『いつも通り』に戻れていたのは言うまでも無い。

 

 

 


( 一応おにーちゃん的ポジションは確保できたんだけどなあ。
 でも満足できないのはなんでかなー?うーん、なんでだろう。
 ずっと『特別』なのは俺だけだったらいいのに。

 …あれ?いやでも、るーくんの為にも理解者はいた方がいいのに。

 ――――あ、もしかして、俺)

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