ささやかなインテルメッツォ（２）

久々にるーくんシリーズ投下。
でもルルとカレンが若干というかぶっちゃけアホの子っぽいです。
そんなの嫌！という方は今すぐ回れ右を。
むしろ皆さんレッツリターン！

自分の仕事を無事に終わらせた朝比奈は、アジトの中をうろうろと歩き回っていた。

「ラウンジにもいなかったし、えー、あと行けるとこなんてあったっけ…？いくらなんでもゼロの部屋にはいないだろうしなあ…」

ぶつぶつ呟く言葉から察することができるように、別に目的無く海月みたいにふらふらしてたわけでなく、探しているのだ。
『ゼロ』ではなく、『ルルーシュ・ランペルージ』を。

月下の整備をしているときにラクシャータが「そういえばあのボウヤ来てたみたいよぉ」と言っていたのを聞いてからずっとこうして探し回っているのだけれど、なかなか見つからない。
ラクシャータは人のことをからかいはしても嘘はつかないので、絶対いると思うのだけれど。

「せっかく頑張って早く仕事終わらせたのにー…」

むう、と顔を顰める。
『ゼロ』の時だってこっそり遊びに行けば別に会えるのだが、あくまで『こっそり』である。あんまり時間も取れないし、出来ることも少ない。
そう考えると、やっぱり堂々と傍にいられる『ルルーシュ・ランペルージ』の時にはできる限りはくっついていたいわけで。

癒しが足りない…とため息をつきつつ、廊下を進んでいくと、なぜか幹部達が、というか黒の騎士団の『初期』の幹部だった扇たちのグループが集まっているのを見つけた。
なんだかみんな扉の前に集まって耳をくっつけている。明らかに盗み聞きしてるようにしかみえないんだけど。

「えーと、何してるの？」
『っ！？』

恐る恐る聞いてみれば、背後から掛けられた声に同時にびくりと肩を震わせたかと思うと、一同振り返りざまに口に人差し指を当てて『しーーーーっ！』と大合唱。
しかし話しかけてきたのが朝比奈だと気付くと誰もが顔色を変えた。
そして扇と杉山と南が一瞬でアイコンタクトを交わしたかと思うと、３人がかりであっという間に朝比奈は取り押さえられてしまった。
なんで作戦のときに使わないんだその特技！言いたかったが、口も塞がれてるので声にならない。
扇はへりゃりと眉を下げて、申しなさそうに謝る。

「す、すみません朝比奈さん…！ルルーシュ君が朝比奈さんのお気に入りの子だってことは分かってるんです！
でも、でもですね！親友の忘れ形見なんだし、兄代わりとしてはやっぱりカレンには正体不明な仮面の男よりも同世代の美少年とできれば健全な恋に落ちて欲しいなあなんて思うわけでして…！！」

気弱そうな発言をしていても腕の力は緩む様子は全くみられない。周りのメンバーもうんうんと同調している。

「別にゼロが悪いわけじゃのよ、悪いわけじゃ」
「ただなあ、やっぱり妹同然なんだし、どうせならなあ…」
「妙な仮面違和感無く被ってる男にキラキラ憧れの視線向けてるの見るとなんか複雑な気分に…」

いやそれ同一人物だよ！全く意味無いからその行動！
うっかり叫びそうになった朝比奈は口を塞がれていてよかったのかもしれない。そんなことで正体バレたらしばらくルルーシュは口をきいてくれないだろうし。

（それにしても一体何をしてるのさるーくんは！？）

扇たちの言葉からしてカレンといるのは確実なのだが。

「いや、俺達も途中から２人が一緒にいるのに気がついて此処にいるから、何してるのかは分からないんだけど…」
「覗いたりしたら絶対カレン気付くものね…」
「声だけ聞いてると恋愛相談してるようにも人間関係に悩んでいるようにもいっそ二人でナニかしてるようにも聞こえるんだよなー…」

朝比奈の表情でなんとなく言いたいことが分かったのか、次々に分かっている現状を述べていく。
と、いつもよりも感情が高ぶったようなカレンの声が聞こえてきて、さっと口を塞ぐ。
だからなんでそれを作戦の時に以下略。

「だめ…だめよ、私には…無理だわ……！」
「…カレン」
「だって、私には理解できないんだもの！しょうがないじゃない！」

なにがだ。
誰もがさらに聞こえてくる声に意識を集中する。

「貴方みたいに見ただけで性質なんて見抜けないんだもの！でも分からなきゃ、形式通りにしても意味がないんでしょう！？私にどうしろっていうのよ！最初から、最初から手詰まりなのよ！？」
「落ち着け！よく見ればいいんだ！少しずつ、分かる情報を頭で整理して、そうしていけばお前だってきっとどうすればいいか分かるようになる！慣れてさえしまえば、どう扱えばいいかなんて理解できるようになるから」

……もしかして、ゼロについて相談してたりするんだろうか。恋愛相談？
まあ確かに仮面だもんなー。アレでどういう人物なのかすぐ見抜けるような人は神だよなー。
でもルルーシュ君の「扱う」発言は如何なものだろう。一応ウチのリーダーなんですが。

しばらくして、少し落ち着いたのか、カレンはさっきとはうってかわった調子でぽつりと呟く。

「……あとから、他の人のやり方を見れば、どうすればよかったのかは納得できるの。
でも、でも、初対面の時にはどうしたらいいのか分からないのよ…！」
「…それは」
「どうしたら貴方のように、どうすればいいか分かるようになるの？―――私、きっと、相性が悪いんだわ…」

自嘲するように暗い声を漏らすカレン。
……ん？初対面？ならゼロじゃないのか。学園で人間関係にでも困ってたりするのだろうか。もしかして、枢木スザクか！？
いやいや、すでに面識あるだろうヤツとは。じゃあなんだ。誰がカレンを困らせているんだ！
元紅月グループの一同はだんだんと剣呑な雰囲気を纏っていく。もしもうちの妹分泣かせたりしたらぶっころーす！

うわあなにこれーと朝比奈は思った。とりあえずはやく解放してほしい。いろんな意味で。

まあ、そんな扉の外のことを知る由もない二人。ルルーシュは優しく、それでいて強い意志を籠めてカレンに語りかける。

「カレン、よく聞け。友達の友達は友達なんだ。よって俺とカレンが友達なら、カレンだって分かるようになれるはずだ！」
「ルルーシュ……」
「大事なのは笑って有耶無耶に誤魔化すことじゃない、真剣に向き合うことだ」
「…そうね、そうよね！私、もう少し頑張ってみるわ！」
「カレン！」
「ルルーシュ！」

あれ、なんか青春漫画っぽく落ち着いた？しかも少女系じゃなく少年系。
なんだか安心したような残念なような。微妙な気持ちになった扇たちのなかで、玉城はあからさまに不満そうに「つまんねーの！」と踵を返そうとして、―――返そうと、して。
何故か。何故かこの絶妙なタイミングで後ろの方へとずっこけた！

後ろにいるのは女性である井上と朝比奈取り押さえてて動けない扇と杉山と南。
そしてご存知ではないだろうが、この部屋の扉は立っただけでは開いたりしないのだけれど、傍にあるスイッチを押すと横にスライドして開くのだ。
この後の展開はまあ予想できるだろう。まさに偶然に偶然が重なって、慌てて玉城の体を避けようとした井上がうっかり肩のあたりでスイッチを押した。

つまり。

どったーん！

思いっきり大きな音を立てて、玉城をかわせなかった朝比奈と朝比奈を押さえている３人は部屋の中へと倒れこんだ。これどんな漫画。

 

ああやってしまった！と思わず誰もが身を縮めて２人の言葉を待つ中、しかし掛けられた言葉は意外なものだった。

「……そういえば、扇さん？だっけ。この人に聞いても、よかったんじゃないのか？」
「だって扇さん副指令なのよ？忙しいのに、時間割いてもらうの悪いじゃない」
「だがな、俺は本職ってわけでもないし…」
「結構アンタの説明も分かりやすいと思うけど」

ほのぼのと会話を続ける２人は別に全く気にしてないようで、逆に戸惑いを覚える。え、何この空気。
とりあえずどさくさ紛れに解放された朝比奈は、己の疑問を聞いてみることにした。

「えーと、るーくん。一体今まで何してたの？」
「？　何って…」

きょとん、とカレンとルルーシュは２人仲良く瞬きをして。

「「ベクトルの勉強？」」

そういえば２人の目の前には開かれたノートと問題集。置かれている懐かしの教科書には「数学Ｂ」の文字が燦然と輝いていた。







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実はカレンとルルーシュの会話は私が昼休みに友達と交わした会話です。ちょっと変えてますけど。
でも「友達の友達は友達～」発言はホントのことですよ（笑）
そしてもちろんベクトルと友情を正しく築けないのは私です。いや、カレンはベクトルなんかで躓いたりしないとは思うのですけど。カレン頭いいし。ありえないとはわかってるんですけどね！
だって奴ら本質（＝aベクトルとbベクトルでの表示）が見抜けないと社交辞令（＝公式）が一切通用しないんだ…！
うぅ、今に見てろよ！絶対に親友になってみせるんだからなーーーー！（ぇ）