弟子入り宣言！

無名祭祀者さまからのネタ提供より派生です。
「明日は淵瀬！」の続編、なぜかあーるつー。
書いてて楽しかったです。でも予想以上に時間がかかったのでコメント返信はまた明日にでも。

※修正しました。NONAMEさん、ご指摘感謝です。

ゼロことルルーシュは軽く眩暈がするのを感じた。

ひとまず今いるのはエリア１１ではなく中華連邦。しかも逃走中。
しかしこれが今出来る最善の一手だったことは間違いないと思うのでそれについては後悔してなんていない。
そうなのだ。作戦通りにブリタニアとの政略結婚を打ち壊し、上手いこと天子を手中に収めることができたことはいい。全く問題ない。
でもなんだ今の状況は。想定外にも程がある！！

「こ、これからお願いします！ゼロさん…いえ、師匠！」
「頑張ってくださいましね！ゼロ様ｗ」

目の前には目を期待に輝かせた天子と楽しそうににこにこ笑っている神楽耶。
ふと助けを求めようと周りを見ても、誰もが微笑ましそうに見ているか、さっと目を逸らすか、もしくは…待て、なんでそんな羨ましそうに見てる千葉！
お前も天子と同じとかそういうことじゃないだろうな！？

ブルータス、という某悲劇集に出てくる名前がルルーシュの頭を過ぎった瞬間だった。
つまりは「ブルータス、お前もか！」――わりと定番の台詞である。でも最近の人出典知らなかったりするよね！

それにしてもどうしてこんなことになったんだったか。
とりあえず結果的にコレいい方向に行ってるんじゃということは措いておく。措いておくったっら措いておく！

天子からの弟子入り宣言が為された今に至るまでの過程、即ちほんの少し前のことだが、そのことにルルーシュは思いを馳せた。

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イライライライラ。
今のゼロの持つ雰囲気は機嫌がまさにその擬音が相応しいとそう物語っていた。

ゼロの持ち出した話に関してはあやふやではっきりしない答えしか返すことがなかった天子が今は楽しそうに神楽耶と恋愛話に花を咲かせているのだ。
これでどうしてイラつかずにいられようか！いや、いられまい。
ついでに神楽耶も今の状況を鑑みてそ恋バナどころではないのだと気付いてくれないものか。
天子を説得できなければ中華連邦をこちらに取り込むことが困難になる。ゼロには上手いこと口で言いくるめられる自信はあった。
しかしカケラも政治に関してどころか常識さえ怪しい、自分の意見を言うことさえもままならない、まさにユーフェミア以上の『お飾り』な幼帝ではその自信も無に還った。理屈が通じないどころかそもそも理屈を知らないのでは話になるわけがない。

ならば別に天子の説得は神楽耶に任せて放っておけばいいだけの話なのだが、無性に苛つくのは何故なのか。
ルルーシュの今の格好は『ゼロ』だから、怯えるのはまあ仕方ない。というか多分それが原因ではない。
では何故、というか何がこんなに腹立たしいのだろうか。

少なくともその天子と星刻の仲が羨ましいとか、そういうわけではない。絶対ない。
だってルルーシュは藤堂とちゃんと上手くいっている。騎士団周知の事実だ。砂が吐けそうとは団員達の言。
ちゃんと「愛してる」とも言ってくれるし、抱きしめてくれるし、キスだってしてくれるし、その、うにゃうにゃも……///って、そうではなくて！
ルルーシュ自身だって忙しいけれど、時間を作っては手料理を振舞ったり服を繕ってあげたりマッサージをしてあげたり膝枕で耳かきとかしてあげたりとかいろいろしてしている。夫婦のコミュニケーションはばっちりだ。

そこまで考えて、ようやくルルーシュは苛立ちの原因に思い当たった。
そう、天子の「難しいことは…」と政治などの話題を敬遠しようとする態度だ。

天子の態度からして星刻が好きなのは明らかなのに、そうして星刻の力になろうとは思わないのか。
別に政治に関して知識が無いことを責めるつもりは毛頭無い。原因は大宦官たちなのは分かりきっているからだ。
しかし、全く本人にもそれを克服しようとする意思が感じられないのはどうなのか。せめて「もう少し分かりやすく言ってくれませんか」とか。
『難しい話』は『自分に分からないこと』だと切り捨ててはどう頑張っても『お飾り』から逃れることは不可能だ。
そもそもあのクーデターで星刻が助けにきてくれたことを素直に喜んでいたようだが、その後星刻が処刑される確立がかなり高いことに気付いているのか。
神楽耶だって、ある程度は政治を知り、自分に何が出来るのか理解しているというのに。

だいたい自分だって天子と同じくらいの年齢だったときにはもう。

そこまで考えて、軽く頭を振って思考を止めた。自分と天子とでは状況が違う。比較するだけ無駄だ。
それに天子の事情は『騎士団』には関係ない。お飾りであろうとなかろうと、天子が天子たればそれで問題ないのだから。
そう己を納得させると、未だ話に夢中な神楽耶と天子に背を向け―――

「そうですわ！ゼロ様のところで花嫁修業をなさるのはいかがです？」
「え、花嫁修業？」

ゼロはマントの端を踏んづけてずっこけた。
団員達は見なかったことにしてあげた。うん、まあ突拍子もない発言だったもんね今の。

「ゼロ様は天子様の年の頃には、もう藤堂様のハートをばっちりゲットしてましたもの！年上の男の攻略法はきっとばっちりですわよ！」
「とうどう…？」
「『奇跡の藤堂』です。ご存知ではいらっしゃらない？」
「う、ううん。知ってるわ。でもあの人って結構年上だったと思うのだけど……」
「そうですわね、多分天子様と星刻という方よりも年は離れていますわ」
「え！そ、それで、わたしと同じくらいの年で…？」
「はい！あ、別に藤堂様がそういう嗜好持ちだったというわけではないのですよ？ああ、でも、ある意味ゼロ様が目覚めさせたと言っても間違いではないような…」
「そうなの！？ゼロ」

心なしか尊敬の目で見られている気がする。ゼロは少し居心地が悪そうに顔をというか仮面を背けた。床の上に蹲ったままなのはご愛嬌だ。

「ゼロ様は昔から聡明でしたから、天子様と同じくらいの年のころにはもうばっちり日本が誇る大和撫子と言っても過言ではありませんでしたのよ？」
「やまとなでしこ？」
「理想の妻ということですわ！」
「わあ、すごい…っ」

あ、何かさらに視線に熱が篭った気が…！
つーっと何故か背中に冷たいものが流れるのを感じたとき、斬月のチェックを終えたのか、藤堂がやってきた。
その場に天子がいるのを見てどうしたものかと戸惑った様子を見せたが、一礼してからゼロの傍に駆け寄り、手を伸ばす。

「…こけたのか？あまり無茶はしないようにしないと」
「大丈夫だ。別に疲労がでたわけではない……ああ、ちょっと想定外だっただけだとも」

迷うことなく手をとり、立ち上がったゼロに藤堂は口元を緩めた。

「ならいいが。君は俺の大事な家内だからな。できるだけ負担を掛けたくないと思ってるんだが…」

現状はな、と眉を顰めた藤堂に、仮面の下でルルーシュは頬を染めた。だってそんな優しい声で言うなんて反則だ！

「おま、大事な家内とかあっさり言うな馬鹿！それに別にお前のために騎士団率いてるんじゃないんだからな！優しい世界がほしいってナナリーが言ってたからなんだからな！！」
「だが、そこは俺にとっても優しい世界なんだろう？」
「そ、それは…その…_{^{そうだけど}}……///」
「この作戦が終わってある程度落ち着いたら、また君の手料理が食べたい。蓬莱島に来てから忙しくてあまり時間も取れなかったしな…久しぶりに、２人でゆっくりしないか？」
「……まあ、してあげないこともない、です…///」

いたって自然な動作で藤堂は仮面に手を伸ばし、軽い音とともにそれはあっさりと外される。
そして露になった唇に、優しくキスが落とされた。

「……っ///何するんですかいきなり」
「充電、だ。いいだろう？どうせ暫くまた忙しくなるだろうしな、なら今のうちに愛しい女に少しでも触れたいと思うのが男の性というものだ」
「いとし、……相変わらず気障なこと言うんですから！もう！」

熱くなった顔を誤魔化すかのようにぷうっと頬を膨らまして睨みつけるルルーシュ。可愛いだけだと本人は気付かない。
そして苦笑とともに額に落とされるキスを甘受して、いつものように藤堂の腕に包まれようと―――

「うわあああ……///いいなあ、素敵…」
「でしょう？私も理想の夫婦だと思うんですの！」

がっちんと２人は硬直した。
そうだよそういえば天子様いらっしゃいましたよ！！やっべ、すっかり忘れてた！

団員達も二人の世界になるのはいつものことだからとうっかりツッコミ損ねたらしい。これ日常だもの！

「え、ええと、その、とうどうさん、でしたっけ。あの、ゼロさんのこと好きになったきっかけ、とかは」

興奮気味に頬を赤らめ、きらきらと効果音がつきそうな勢いで瞳を輝かせて天子は問いかけた。
そしていつの間にかゼロのことはさん付け。多分素顔の影響かと思われる。
そんな期待の眼差しで見られた藤堂は思わず身を引いた。え、ちょっと、なんだこれは。

「す、好きになったきっかけ、ですか？」
「だって、年の差って結構その、抵抗とかあったりするんでしょう！？や、やっぱり星刻も気にするのかな、なんて…」
「まあ！そんなの愛があれば乗り越えられますわよ！」

少女たちの視線を受けて、藤堂はちょっと思案してから口を開いた。

「その、ル…いえ、ゼロは自分が面倒を見るつもりだったのですが、逆に家のことをしてもらったりと自分がお世話してもらったようなもので。
料理はそのころからとても美味しかったですし、他の家事をするときも、なんというか、小さい体で頑張ってこなす姿が可愛らしいと…あ、いえ、そうですね。まだ１０歳だというのに礼儀作法などだけでなく学問や芸術、政治や軍略にさえも長けていて、大人顔負けの姿を見せたかと思えば、ちょっとしたミスをして幼さを覗かせてみたりと、……年の差さえ無ければ、と何度思ったことか。成長して再会して改めて惚れ直したというのもありますが」
「真面目に返すなばかーーーーー！///」

照れも限界に達したルルーシュが渾身の力で藤堂にタックルをかましたが、これ幸いと藤堂の腕の中に閉じ込められた。
じたばたもがいてもびくともしない。心なしかルルーシュを抱きしめている藤堂は満足そうだ。充電中充電中！

「う…わ、わたしじゃムリだよぉ神楽耶……お料理もしたことなしいし、お勉強も苦手だもの…」
「大丈夫です！ですからゼロ様の元で花嫁修業をすればいいのですわ！」
「わたしも、星刻のお嫁さんになれるかしら？」
「もちろんなれますわ！そのためにも天子様には是非合衆国に参加をしていただきたいのですけれど」
「そうなの？」
「ええ、敵対していてはそんなことできないでしょう？なので是非参加を」
「わかったわ！わたし、参加します！」

最初に頑張った『ゼロ』の説得は一体なんだったのかと思うほどあっさり参加を宣言された。
それでいいのか天子。それでいいのか中華連邦！？
黒の騎士団にとっては有利な状況に話が進んでいるが、本当にこれでいいんだろうかという疑問がどうしても湧き上がる。
いや、いいけど。いいんだけど！でもなんか釈然としないのはなんでかな！

そして冒頭の台詞に戻る。
いやあホント何なんだこの状況。そして千葉はやっぱり花嫁修業を一緒につけてもらいたいんだろうか。視線が痛いんだが。

しばらくして追いついてきた神虎及び竜胆にオープンチャンネルで天子からの宣言が為され、誰もが絶句したことは言うまでも無い。

 

 

（合衆国に参加！！？くそ、黒の騎士団！一体天子様に何を！？）
（いや、私は何もしてないんだが…）
（ゼロ師匠は『奇跡の藤堂』さんと夫婦なの！理想のお嫁さんなの！星刻、わたしがんばるから！）
（へっ！？天子様、頑張るって一体何を…え、夫婦、ですか？それじゃあゼロは女…！？）
（ゼロ師匠はとうどうさんの美人で才色兼備な幼な妻なのよ！『やまとなでしこ』なの！わたし、師匠のところで修行して、立派なお嫁さんになってみせるわ！）
（おさな…っ！？『奇跡の藤堂』はロリコンだったのか！？）
（あ、斬月が）
（ものすごい勢いででてったわねぇ～）
（俺はロリコンじゃない！ル…ゼロ一筋だああぁぁあああ！）
（……鏡志朗さん…///（きゅん)
（ていうかいろいろ違うでしょう！？まともに戦いなさいよ！！）
（…カレン、それは今更だ）